2004年7月29日

愛の平等(トリコロール 白の愛)

B0000AKI6U.09.MZZZZZZZ.jpgカロルは妻ドミニクに訴訟をおこされ離婚させられてしまう。理由はセックスができないから。ドミニクはもうカロルを愛してないという。まだ強く愛していることを確かめにいくが、冷たくあしらわれるだけだった。カードも無効にされ、カロルは一文無しになった。
地下鉄の通路で物乞いをして暮らそうとしたとき、母国を同じくする男と出会う。カロルはトランクのなかにかくれ、故郷ポーランドへ密航するのであった。
カロルは故郷で大金を手にする。会社をひらき、成功もした。それでもまだドミニクのことが忘れられなかった。電話をしてみても、しかしすぐに切られてしまう。愛はあいかわらずカロルからの一方的なものだった。おなじだけの愛を彼女に抱かせることができるのだろうか。

テーマ自体を映画全体で追求している感じはなく、ラストでカロルとドミニクの結論にいたる、その間のストーリーはテーマと直接の関係がありません。
似たところがあるとすれば、〈かけひき〉がくりかえされること。カロルは密航の手伝いをしてもらう男に地下鉄の通路で死にたがっている男の殺害をたのまれるのですが、それはあとで実行にうつされます。また、大金を手に入れるときも寝ているふりをしてとっておきのネタを盗み聞き、抜け駆けする。もちろん、それがばれることをみこして、あいてに高額で買い取らせます。こうしたかけひきのくりかえしはさいごに、カロルのことを無視しつづけるドミニクをよびだす作戦へとつながります。この作戦が実行されるまえにドミニクはポーランドへ入国していることがあとでわかります。このへんの仕掛けがうまいですね。

キェシロフスキ・コレクションII 「トリコロール」セット
価格:14,000円
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
出演:ズビグニェフ・ザマホフスキ, ジュリー・デルピー ほか
Amazonアソシエイト

2004年7月26日

キング・アーサー

伝説となるまえの、おそらくこうであっただろうアーサーおよび騎士たちのすがたを描いています。

ローマ帝国がヨーロッパ全土に勢力をひろげていたころ、属国となっていた周辺の国々から15年の契約で騎士として徴兵されていた男たちがいた。現在イギリスがある島ブリテンにも、ローマの支配に反抗をつづける現地民〈ウォード〉の侵攻をおさえている騎士の一団があった。そのリーダーがアーサーである。
アーサーたちは15年の任期をはたし、かれらに自由をあたえるはずのローマ教皇からの使者をむかえる最後の任務についていた。しかし、使者はかれらを解放するまえにウォードの支配地域をぬけ、辺境で布教活動をしているローマ人一家の救出を命じた。ローマを逆に侵攻しつつあったサクソン人がブリテンにせまってきており、ローマ軍はブリテンからの撤退をきめていたのだった。
アーサーはこの任務中に、自分の師匠にあたる人物がローマで死に追いやられていたことを知る。それは師匠が教えてくれただれもが平等で自由に生きる社会がローマでは幻にすぎないことを意味した。

濃密なドラマ。迫力ある戦闘シーン。かなり楽しめる映画です。

続きを読む "キング・アーサー"

2004年7月20日

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

これまでの映画のハリー・ポッターでいちばんおもしろかった。
映像は、さらに凝った、うつくしいものになっていました。
一作目の本を読んだときにもおもったんですが、ハリー・ポッターはアクロバティックなくるんとひっくりかえす展開があります。作者のローリングは、お話のおもしろさをよくしっています。この映画にもくるっと展開する部分がふたつあります。観客をあっといわせておどろかせようとするより、物語をたのしませようとする姿勢に好感が持てます。その展開は、おおまかにみると定番、よくあるパターンといってしまえるのですが、そこにいたるまでの細かい仕掛けがうまくつくられていて、ハリー・ポッターならではのたのしさにしあげられています。

2004年7月18日

シュレック2

観てきました。吹き替え版のほうです。
シュレックの声をあてているのはダウンタウンの浜田さん。
自分にとってはシュレックじゃなくていつまでも浜田さん。
絵のむこうの浜田さんが透けてみえ、ちょっとのめり込みにくい気がしました。
あんまり浜ちゃんをしらないお子さまだったら、そんな違和感も感じず、関西弁をたのしめるのではないかと思います。

ストーリーは、のろいで化け物にすがたを変えられたフィオナ姫と、彼女のハートをみごと射止めたシュレックが、フィオナ姫の父と母に招かれて、フィオナ姫の故郷へといくが、まだ化け物のすがたのままのフィオナ姫と化け物そのままのシュレックをみた国王はふたりの結婚に猛反対。よからぬことを考える。一方、シュレックは自分のすがたが変わればいいのではないかと魔法にたよる。

ファンタスティックな童話のネタをたくさんもりこんであってたのしいです。
脇役がすごくいい。
一作目はみていないのですが、かれらがでているんなら、みてみたいなと思いました。

内容的に大人のほうがよりたのしめると思います。
容姿のコンプレックスとか、ほかのひとに嫌われたり、がっかりされたり、いっぱい傷ついているひとのほうがより笑えて、たのしめます。
でも、子どもも直感的によくわかっているし、大人の真実をかいまみたい欲望は私はちいさいころにあったから、その辺はオッケーでしょう。
子どもの年齢を問わずに親子で観られる映画かなー。

2004年7月17日

天帝妖狐

4087473422.09.MZZZZZZZ.jpgふたつの小説がおさめられています。
ひとつめは「A MASKED BALL」。
高校のトイレの落書きから見知らぬ学生との交流がはじまる。やがて、この落書きのきっかけをつくったカタカナだけで文章をつづるひとりが狂気をはらんだ過激な行為を構内でくりかえすことになる。
もうひとつは「天帝妖狐」。
ひとりで〈こっくりさん〉をしていた少年がであった霊〈早苗〉に死への恐怖から永遠の命とひきかえに自分の体をゆずりわたしてしまう。

「A MASKED BALL」の犯人(カタカナの落書きのひと)は、結末近くで明かされたそのひとなのか、それともべつのあのひとなのかとちょっと考えてしまいました。考えすぎかな。
また、巻末の解説にありますが、ネットワーク物の小説でよくつかわれている匿名性は、こういうトイレの落書きを題材にして充分に書けてしまうんですね。ネット物のさらなる発展を望みたいものです。

「天帝妖狐」の結末の会話のすばらしさ。胸をしめつけられました。

"天帝妖狐"
乙一
集英社文庫
460円
Amazonアソシエイト

2004年7月12日

スパイダーマン2

観てきました。
映像に迫力がありました。
構図というか、カメラアングルが大胆。
はでなアクションがつづくと、えてして、なにが映ってるのかわからなくなる映画が多いなか、しっかりみせてくれるので、うごきのおもしろさを堪能できます。
ちょっと悪ふざけもありますが、ヒーロー物にはあってるかなと思います。
スパイダーマン自体は、CGであることを隠そうともしない、堂々たるCGなんで、もちょっとどうにかならないかなと思ったけれども、これはわざとなんでしょうね。悪役の機械の腕や、背景の一部もCGのはずで、これはけっこううまく作ってあるから。
また、悪役の暴力シーンがけっこう怖いです。予告編を観たときには、なんだかおっさんでちょぼくせー、と思ったけれど、ふたをあけてみると地味なだけにかえって怖いキャラにしあがっていました。

ストーリーは、スパイダーマンくんが、ヒーローをやるのはいいけど、自分のほかの生活が犠牲になりすぎて、まいっちゃうお話です。ティム・バートンのバットマンよりもうまく描けていると思います。エピソードの盛り込みかたがうまいし、音楽の使い方が巧み。
これはいいっす。

2004年7月11日

ファファロ! ニャモゴデン! 「アラーの神にもいわれはない」

4409130269.09.MZZZZZZZ.jpg「アラーの神にもいわれはない」——アラーの神さまだってこの世のすべてに公平でいらっしゃるいわれはない。これが決定版タイトルと冒頭に書きしるしてはじまる少年兵として生きた架空の男の子が語る物語。
西アフリカ、リベリア・シエラレオネの終わることのない内戦。ぐちゃぐちゃな世界。殺してうばうのがあたりまえになってしまった社会では、たよるべきものがいないちっちゃな子どもたちは、もう少年兵として生きるほかない。
語り手の男の子、ビライマは、悪態をつきながらも、子どもを主人公かつ語り手とした童話のような感じで話をすすめていきます。

続きを読む "ファファロ! ニャモゴデン! 「アラーの神にもいわれはない」"

2004年7月 5日

うつくしい子ども

4167174057.09.MZZZZZZZ.jpg行方不明だった小学生の女の子が学校の裏山で遺体となってみつかった。犯人は弟だった。弟がなぜそういうことをしたのか、その理由を確かめたくなった。

全体的に学園物のスタイルで展開。補助的にその地方の新聞記者の視点からなる章がいくつか挿入されています。
結末のふたつのエピソードがなかなかすばらしく、うまく小説を終わらせています。また、タイトルの決め手となったであろう主人公の母親のセリフなど、要所要所をうまくしめていて、小説を形よくしています。

"うつくしい子ども"
石田衣良
500円
Amazonアソシエイト