2004年8月30日

慟哭

4488425011.09.MZZZZZZZ.jpg胸に穴があいたような悲しみにとり憑かれた男は距離をおきつつも新興宗教にのめりこんでいく。その様子を書いた章と、連続幼女誘拐事件を捜査する刑事たちを書いた章が交互に進行していきます。犯人はおそらく、さいしょの男。やがて、彼の悲しみの原因がはっきりする。娘を失っていたのだ。カバラの教義をもとにした宗教団体で死者復活の奥義にふれた男は、娘の復活を試みる。

犯人は、登場人物の誰か、しかもいちばんそれらしくないひとというのがミステリーの逃れられぬ運命。犯人が誰かわかることはじつはそれほど重要ではありません。意外性は、犯人でないように描かれた部分が角度を変えると彼が犯人であるという証拠に一瞬にしてすがたを変える瞬間。その仕掛け。にあります。

意外性以外のミステリーの味わいは、犯行の動機や、犯人の人間像にあります。

この「慟哭」は、その二種類の味わいが、多少あまくはありますが、たのしめます。

私は、犯人が明らかになる瞬間よりも、最後の三行にハッとさせられました。

"慟哭"
貫井徳郎
創元推理文庫
756円
Amazonアソシエイト

2004年8月23日

誰かが知っていてくれたので(誰も知らない)

誰も知らない」を観てきました。

母親が帰ってこなくなり、子どもたちだけで生活していかなければならなくなった4人の兄弟姉妹の物語です。
お母さん役はYOU。惚れっぽくて、でも男には捨てられてきて、子どもたちの父親はおそらくみんな別々らしい(少なくともふたりはいる)。そんな彼女がまた男に惚れて、家に戻らなくなってしまう。子どもたちをまったく突きはなしているわけではなく、とにかく恋に夢中で、まわりに眼がいかなくなっているかんじ。
月日がすぎていくとお金は底をつき、電気も水道も止まり、子どもたちは公園の水道で水をくみ、のどをうるおし、洗濯をし、親しくなっていたコンビニ店員のお兄さんに期限切れのおにぎりをわけてもらってなんとか空腹を満たすような生活になる。
そんななかでもそれなりに楽しげにやっていくのだけれど、母親がいたころから、みんな学校へ通っていないので、遊び友だちがいないのが悩みのタネ。
ひとの暖かさに飢えています。
誰も知らないのは、この生活が誰からも知られていないという意味よりも、かれらが誰も知らないという意味あいが強いのかもしれません。
映画全体はおだやかで、悲しい感情、泣きの場面はかなり抑えてつくられています。押しつけがましさはありません。
それでも、なんだかしれないけれど、ぐおーっと涙がこぼれてきます。たのしげで微笑ましい場面でふしぎと泣いていました。
制作者の怨念を晴らすような作り方はしていないんですね。社会批判でもない、人間は汚い、冷たいのだと主張しているわけでもない。心にはしっかり残る。
私は、やさしい気持ちをとりもどした気分になりました。


映画のなかで兄弟と親しくなる高校生(中学生?)。どこかで観た記憶があり、エンドロールのクレジットの「韓英恵」という名まえにも覚えが。……帰りの車のなかで思いだしました。江角マキコが殺し屋をやっていた「ピストルオペラ」(鈴木清順監督)にでていた女の子だ!

2004年8月20日

MT無頼控

サイトのデザイン変更はおもしろい作業です。
でもちょっとしたむずかしさをともないます。じぶんたちが実際にみているサイトとは似ても似つかぬ文字だけのファイルをいじらなければいけない。コンピュータの経験がなければ、これがまずかなりう高い敷居になっています。
私はプログラムの経験がすこしあり、あるていど推測がつくので、手探でやりはじめました。
こういうときに役に立つのは、ほかのひとたちの情報です。
さいしょに参考にしたのが、「「私は快楽なんて知らない」と「BLOG質問箱」。
最近は、「Ripen Ф Blog」に注目。よくみています。
試行錯誤の様子まで書いてあり参考になり、また読み物としてもたのしめるのもいいところです。
日記もいいなー。

自分ところはレビューだけが続いてるけど、日記も書いていこう。

----
あ、Ripen Ф Blogさんへのトラックバック失敗。
むこうにはきちんと届いているのに、こっちは失敗の表示が。
検索してみるとどうやら、設定ファイルmt.cfgのPingTimeoutの数字を増やせばいいらしい。
参考→ eulog. - "Trackbackのエラーに対処する。PingTimeoutの設定"

----
ここ(華氏451度)、エラーがでてコメントが書きこめなくなっているようです。
Ripen Ф Blogのクサノミさん、ご指摘ありがとう!

2004年8月15日

ユーモア小説もいけます!(平面いぬ。)

4087475905.09.MZZZZZZZ.jpg4篇からなる作品集。
表題作の「平面いぬ。」は、肌にいれた小さな刺青が生きているように勝手にうごきだすお話。
さいしょは怖い話かと思っていました。
刺青というと、私はブラッドベリの短篇を思いうかべます。全身に彫られた入れ墨がぐらんぐらんうごきだす。思いうかべるわりにぜんぜんその短篇のストーリーが思いだせないんですが、ギラギラしたまなざしの筋肉質の男性の肌にうごきだす刺青がー、のイメージだけはつよく思いうかびます。
胸が悪くなるようなおどろおどろしい話のイメージで読みはじめたんですが、とんでもない。
主人公で、話者でもある、高校生の女の子が、すごいすっとぼけた能天気な性格なので、さいしょからさいごまで、笑える、ほのぼのとした小説になっていました。屈折しているけれど、それだけに心暖まる家族愛も描いていたりして、いい作品です。

ほかには「石ノ目」。これは、民話にでてくる妖怪をモチーフにした作品。

そして「はじめ」。想像の中だけにいた女の子が実際にあらわれて、というホラーにありそうなモチーフを、せつない青春小説にしあげています。とても仲良かったけれどもう会えなくなってしまった幼いころの友だち、のストーリーですね。

それから「BLUE」。なにかのきっかけで命があたえられ生きるようになったぬいぐるみのお話。ぬいぐるみの設定、ぬいぐるみが買われていく家族の設定、とくに弟のキャラ設定が乙一さんらしいと私は思います。前半がちょっと同人小説ぽい冗談とキャラ設定がありますが、後半はしっかりしています。

なかなかバラエティーに富んだ作品集になっています。
さつないのもあるし、怪奇趣味+トリックもあるし、ユーモアもあるしで、さいしょに読むのにいいかもしれません。

"平面いぬ。"
乙一
集英社文庫
620円
Amazonアソシエイト

2004年8月14日

ゴーストワールド

B000064819.09.MZZZZZZZ.jpg高校を卒業したばかりのイーニド(ソーラ・バーチ)とレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)は小さいころからの親友同士。ふたりは進学はせず、かといってやることもみつかる茫洋とした夏をすごす。町でおもしろそうなひとをみつけ笑いのタネにする。そうしているうちにレベッカは仕事を見つけ、家を出て、イーニドとふたりで暮らすことを計画する。けれども、イーニドはなにをしていいかわからない。
なにもかも中途半端で、そんなんじゃだめなのはわかっているけど、どれもこれも突き進んでいきたくなるほどのものではない。
どうしたらいいんだろう、な、女の子のストーリー。

全体的にだるめに進行します。なので、すっきり感はありません。
笑えるけれど、ほろ苦く、切ない。
独特の味がある映画です。

続きを読む "ゴーストワールド"

2004年8月11日

マッハッ、ハー!

「マッハ!」を観てきました。

連鎖的なアクションがうまく、みごたえありました。
香港映画のような、やたら長い格闘はなく、きりがいいです。みやすく、迫力があります。
三輪の、バイクなのかなー、あれは。有名な三輪のタクシー、トゥクトゥクをつかったカーチェイス。かなりすごいんですが、しっかり計算、リハーサルした上で撮られたクラッシュシーンだと信じたい。高架から落ちていくトゥクトゥクにはひとは乗っていなかったようだからだいじょうぶでしょう。

ストーリーは、笑いをとる場面がけっこうありますが、全体としてはシリアス。
村の仏像の頭が盗まれ、主人公がそれをとりもどしにいくお話。祖先がのこした仏像を外国に売りとばす組織を叩きのめしたり、タイの男をばかにする巨漢のアメリカ人をぶちのめしたり、けっこう愛国心に富んでいます。

映画全体は、ジャッキー・チェンなどの香港映画を手本にしているようで、似た部分も多くありますが、ストーリーの組み立てはこちらのほうがうまい。なによりも、生きているタイ・いまのタイがそこにあるのがいいですね。

2004年8月 7日

夢に見た景色がウソならば(ラブ・アクチュアリー)

B0001851BO.09.MZZZZZZZ.jpgたくさんの登場人物のそれぞれのラブ・ストーリーをエピソードごとにこまかくちょっとずつかわりばんこに見せていくタイプの映画。こういうのもオムニバス形式というのでしょうか。

空港での人々の再開シーンから、でだしの数エピソードがすばらしく、とりたててなにも起きてないのですが、涙がこぼれてきました。
途中、ふつうの海外ドラマだなーと思うような、中だるみもありますが、さすがラブストーリーだけあってとっておきの場面がさいごにのこしてあります。終盤しっかり満足させてくれます。
すべてうまくいく恋ではありませんが、それはそれで心にのこります。

コメディ要素が強く、笑いどころも満載です。

"ラブ・アクチュアリー"
監督: リチャード・カーティス
出演: コリン・ファース, ローラ・リニー, リーアム。ニールセン, ビル・ナイ ほか
価格: 3390円
Amazonアソシエイト