慟哭
胸に穴があいたような悲しみにとり憑かれた男は距離をおきつつも新興宗教にのめりこんでいく。その様子を書いた章と、連続幼女誘拐事件を捜査する刑事たちを書いた章が交互に進行していきます。犯人はおそらく、さいしょの男。やがて、彼の悲しみの原因がはっきりする。娘を失っていたのだ。カバラの教義をもとにした宗教団体で死者復活の奥義にふれた男は、娘の復活を試みる。
犯人は、登場人物の誰か、しかもいちばんそれらしくないひとというのがミステリーの逃れられぬ運命。犯人が誰かわかることはじつはそれほど重要ではありません。意外性は、犯人でないように描かれた部分が角度を変えると彼が犯人であるという証拠に一瞬にしてすがたを変える瞬間。その仕掛け。にあります。
意外性以外のミステリーの味わいは、犯行の動機や、犯人の人間像にあります。
この「慟哭」は、その二種類の味わいが、多少あまくはありますが、たのしめます。
私は、犯人が明らかになる瞬間よりも、最後の三行にハッとさせられました。



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