きみにしか聞こえない
「Calling You」「傷-KIZ/KIDS-」「華歌」3作による短篇集です。
"せつなさの達人"とよばれていたころの乙一さんの作品。そのレッテルにしばられて、そのあとしばらく、小説が書きづらかったそうです。
「Calling You」は、クラスメイトともうまくうちとけられない孤独な女の子が主人公。かけるあいてがいないのでケータイは持っていない。持つんだったらこんなのがいいなと想像しているうちに、その想像の携帯電話が現実味をおびてきて、ふいに鳴りはじめた。おそるおそるでてみると、あいては男の子で、自分と似たような孤独を知るひとだった。そんなふうにはじまります。
「傷-KIZ/KIDS-」は、心に傷を負ったふたりの少年の物語。陰口やいじめにたいして腕力で反撃してしまう主人公は特別学級におしこめられる。そこでふしぎな能力を持つ少年アサトと知りあう。怪我をした腕にアサトがふれると血が止まり傷が浅くなった。気がつくとアサトの腕におなじような傷が……。アサトには傷を移す能力があった。
「華歌」は、入院している主人公が散歩にでたとき歌をうたう花をみつける。その花がどうして生まれたのか、そして主人公がなぜ入院しているのかがあきらかになってゆくストーリー。ちょっとした仕掛けがあります。さいしょに読んだときはそれは必要なのかと思いましたが、仕掛けを知ったうえで登場人物たちを思いかえすと愛らしく感じられてきます。(物語の仕掛けとお話自体がうまく噛みあっているうまさが乙一さんの才能ですが、これはちょっと仕掛けが浮いているのはたしか)。
ホラーにも展開できるアイデアがそうならずに、痛々しくてやさしいストーリーになっていくところに特長があります。



コメントする