暗黒童話
片目と記憶を失った女の子、菜深(なみ)。眼を移植されたときからふしぎな映像を見はじめる。それは眼の元の持ち主の記憶。……菜深はやがて地下室に監禁されている少女の映像を見る。大きな屋敷の地下室の天窓から頭だけだして袋につめられた少女のすがたがあった。袋は小さく、少女の手足がそのなかに入っていることなどありえないことだった。大きな瞳はまばたきを返した。物音に気づいた記憶の持ち主はその場から逃げさり、道を走ってきた車にひかれてしまう。ほかには誰も知らない事実。菜深は真実を知ろうとその場所へ旅立つ。
菜深は、いぜんはとても優秀で人柄もよい女の子だったけれど、記憶を失ったあとは勉強も運動もできず人づきあいも苦手な女の子に変わってしまいます。母親はこんな娘ではないといらいらして、さいごには口もきかなくなってしまいます。和解なし、完全拒否はリアルに感じられました。
菜深は家を出て、ちょっとずつ調べていった眼の持ち主が住んでいたところ、映像にみえる場所へと旅にでます。この菜深の物語です。
誘拐犯がでてくる場面が怖いです。「GOTH」にでてくるタイプの人間です。おどろおどろしく書かず、淡々とした描写に恐怖がこみあげてきます。正直いって、この人間を描ける、作者への恐怖です。同時に、菜深も描かれているので、そのまま作者像にはなりませんでしたが。
仕掛けはあいかわらずうまいです。手品のような、ほかへの注意の誘導が上手ですね。大がかりではない仕掛けも、それだけで終わらず、さらにもうひとつひかえているので満腹感がえられます。



コメントする