さみしさの周波数
乙一氏の作品集、「未来予報」「手を握る泥棒の物語」「フィルムの中の少女」「失はれた物語」の四つの短篇がおさめられています。
「未来予報」は、おれは未来のできごとをあてられるんだという友だちが、主人公とおなじクラスの女の子がどちらかが死んだりしないかぎり将来かならず結婚するぜ、と予言する。ふたりは意識しあうようになり、言葉もかわさなくなってしまう。読みおわると、悲しみと同時に、ふたりのつよい愛情に、心があたためられます。
「手を握る泥棒の物語」は、自分がデザインした時計の新作を売りにだしたいが元手にこまった青年が、自分の住む町に旅行にきていた金持ちの叔母がもってきていた現金を盗もうとするお話。こうなるんじゃないかなと予想した結末をちょっとずらすテクニックがうまい。それでいいラストにもちこんでいます。
「フィルムの中の少女」はホラーっぽいスタートを切ります。映画研究会の部室で偶然見つけた古いフィルムを好奇心にかられて映しだすとラスト近くに、ふしぎな少女が映っていた。こちらに背中をむけた制服姿の少女。もういちど見返すと、さきほどの姿勢からちょっとこちらに向きを変えていた。映しだすたびにむこうをむいていた少女の顔がこちらへ少しずつふりかってくるのだった。けっこう読むとこわいのですが、これがやがてせつない、無惨に断ち切られてしまったが、とても率直な愛情の物語へと変化していきます。ここでも「手を握る泥棒の物語」とおなじように、こうなるんじゃないかなと予想したオチをちょっとずらすテクニックがつかわれています。
「失はれた物語」は事故で外界との接触が右腕だけ皮膚感覚とちょっと指さきがうごかせるだけになってしまった男の愛情ゆえにとてもせつないストーリー。ピアノのアイデアがとてもすばらしいです。



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