2005年11月29日

紫禁城の黄昏

4396650337.01._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg4396650329.01._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpgジョン・ローン主演、坂本龍一の音楽、世界各国でヒットしたベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「ラスト・エンペラー」。清朝最後の皇帝・溥儀のイギリス人家庭教師レジナルド・ジョンストンは印象的な登場人物でした。その彼が自らの体験を記した書物がこの「紫禁城の黄昏」で、この映画の原作でもあります。
映画公開された当時、岩波文庫から翻訳がでていたそうなのですが、序章の一部、1章から10章までと16章が省略されています。1章から10章までは著者が皇帝がいる紫禁城へいく以前の中国について書いてあるので、まあ、ボリューム的な問題でやむなく省略ということもありうるのですが、序章の省略は「溥儀に忠義だった清朝の人の名前が出てくるところ」だそうで、16章は中国人による自発的な満州の独立運動・君主制復活について語られているので、翻訳者、編集者が、当時の日本を弁護するような部分を削除したのは確かでしょう。
占領政策として日本を悪とする徹底した情報操作がおこなわれてきたことが、ここ数年でよく知られるようになりました。また戦前から始まった共産主義の活動の影響もあると思います。共産主義はいまある権力を倒さなければいけない使命感をつねにもっていたので、戦前の政治体制は格好の標的となり、巨悪として過剰に描かれることになりました。
そうした影響もやっと薄れ、いたずらな削除がなくなったことはよろこばしいことです。

清朝中国は異民族である満州族が明王朝を倒しモンゴル、チベット、台湾にまで大きく領土を広げ征服してつくった王朝で、しかし二十世紀の始まりには弱体化し、西欧列強および周辺国ロシア、日本の浸食をうけていました。改革は保守派によってつぶされ、外国人排斥運動は諸外国との戦争となり(義和団事件)敗北。朝廷は議会をつくることを約束したが不満はおさまらず共和制への移行がせまられ、皇帝は退位を表明、皇帝の勅命による共和制が樹立することになります。皇帝は退位しても皇帝の称号はそのまま存続しその生活を維持される条約が共和国とのあいだで交わされ、ここに紫禁城に幽閉される皇帝が誕生することになります。

共和国の議会は機能せず、軍事力をもった集団(のリーダー)がいれかわりたちかわり権力を奪いあう内乱状態に陥ります。民衆は、これなら、以前の君主制の方がずっとよかったと思うようになります。皇帝も権力と無関係とはいえなくなり、危険がせまってきます。

王朝の盛衰を語った物語はおもしろい物が多く、この本も名作のひとつに入ると思います。

"紫禁城の黄昏 — 完訳"
R.F.ジョンストン 著 / 中山理 訳
上下各2100円
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