2006年4月18日

偽史冒険世界 - カルト本の百年

 「源義経は死なずに日本を逃げだしてジンギスカンになった」だの「日本はムー大陸の一部だった」だの「日本人はユダヤ人だった」だの、戦前戦後の近代日本にあわられたとんでもない架空の歴史書の数々がどうしてあらわれ、どうして大衆にそれなりの支持をえていったかをさぐる一冊です。  柳田國男が提唱した「海上の道」——黒潮にのって南太平洋から沖縄をたどって日本人の祖先や文化が流れてきた——そんな日本人のルーツをたどる物語でさえ、南方のすべての島々人々はひとつのおなじ民族ではないかと、それを日本人がひとつにまとめなおすのだという理由になる危険性を孕んでいました。そのような意識にささえられて南海の冒険小説が流行しムー大陸の伝説なども浸透していったようです。  義経がジンギスカンになった話も、悲運の英雄が生きのびていたというロマンだけではなく、大陸に日本人の祖先がいたという、大陸進出を正当化する理由としてはばかばかしいものであったにせよ、潜在意識として裏側をささえるのには充分、役だっていたようです。こういうことは日本だけではなく、隣国の中国や韓国にもあります。(日本神話の舞台である高天原が韓国にあるという話が『写真で読む 僕の見た「大日本帝国」』にありました)。わたしたちはあなたがたの祖先であるという優越感です。差別意識から抜けだすことは誰にもできないようです。  日本の戦争への道は、国や軍のせいにされがちですが、日露戦争のときには、大学教授が世界制覇をとなえ、その演説に民衆が喝采をあげていたそうです(立花隆「天皇と東大」)。国や軍は戦争の継続が無理だとしてやめたがっていました。戦争の終結を求めたときにも反対がおこり、講和が結ばれた際には、日本が得た物がすくなぎるとして東京で暴動がおこり無政府状態に陥りました。  ものごとは、上からの押しつけや、ひとりの教祖によって起きるものではなく、それを受け入れるだけの土壌ができていなければいけません。そういった歴史的な背景がよくわかる本でした。 [ASIN:448003658X:detail]

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