映画の見方がわかる本
監督の意図、時代背景など、制作者の視点に立って映画を読み解いています。
たしかに観る側が自由に観ていいものですが、町山さんはしかし個人的な思いこみや誤読からくる意味のない解説や評論を注意しています。個人的な感想ならいざしらず、そういったものが権威をもったりするのが世の常です。しかも、えてして難解なものになりがち。でも、いちいち制作者側の資料をさがしてまで映画を理解しようとすることなんてめんどくさくってやってられませんよね。そこで登場するのが町山さん、それは「映画に関する文章でメシを食うもの者の仕事です。試写室で観た映画の感想文を書いているだけじゃバチが当たります」。
とりあげられる映画は「2001年宇宙の旅」「俺たちに明日はない」「卒業」「イージー・ライダー」「猿の惑星」「フレンチ・コネクション」「ダーティハリー」「時計仕掛けのオレンジ」「地獄の黙示録」「タクシードライバー」「ロッキー」「未知との遭遇」です。
難解といわれる「2001年宇宙の旅」が、もとは非常にシンプルにつくられていたのがまず意外なところ。冒頭に科学者や宗教家による10分ほどの話がありそれが映画の解説になっていて、ああ、これはさっきいっていたことだなとわかるようになっていて、また随所にナレーションがほどこされていたそうです。それを最後にばっさりと切り捨てたのは、"マジック"のため。モナリザがなぜ微笑んでいるのかをダヴィンチが書き添えていたら、あの作品はこんなに褒めたたえられていただろうか?とキューブリックは説明したそうです。
また、個々の映画だけではなく、ここ半世紀のハリウッドの歴史もわかるようになっています。60年代当時ハリウッド映画は保守的で安心して楽しめる(楽しくないけどね)作品しかありませんでした。しかし時代はベトナム戦争、黒人デモを警察が暴力的に鎮圧、マリファナの流行。ハリウッドは現実に眼をそむけていたために凋落していきます。かわって、若手の素人同然の映画が観客の人気に支えられて台頭。世代交代を余儀なくされます。資本主義、キリスト教、戦争、人種差別、家族、親、大人にNOを突きつけたカウンターカルチャーの流れを受けたニューシネマの時代です。勧善懲悪めでたしめでたしのいつも通りの映画は終わり、アウトローや落ちこぼれが主人公になり、勝てるはずのないものに立ちむかっていくようになります。わかりやすい、あらかじめ答えがわかっているような映画ではなくなっていきます。答えをあたえてくれるものではなくなるのです。あれはいったいほんとうにそうなのかといっしょに確かめに連れまわします。どちらを選ぶ? あなたならどうする? と問いかけてきます。映画はここではじめて「作品」と呼ばれるものになりました。
とてもわかりやすく書かれた、おもしろい映画本でした。



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