自分が子どものころにはもう手塚治虫はひとつふたつ前の世代のマンガ家でした。大御所ではありましたが、第一線にいるようには見えませんでした。作品をリアルに感じとれず、古典としてとらえていたように思います。
浦沢直樹が手塚治虫の鉄腕アトムの未完の長いシリーズ「地上最大のロボット」をリメイクすると聞いても関心をひかれず、 西原理恵子センセーが、浦沢直樹じゃなく私にアトムを描かせろと煽っていたら、描いてもいいですよといわれて大あせり、ちょっと描いてはみたものの、やっぱりだめでしたといやいやあやまる、というネタでギャグマンガを描いていたのを読んだぐらいのもので、その後はすっかりわすれていました。
坂本龍一のJ-WAVEの番組のPodcastが今回(12/25, Vol.17)、浦沢直樹とのトークでした。浦沢直樹の話に耳を傾けているうちに「PLUTO」にだんだん興味がわいてきました。さっそく現在でている1〜4巻を買い、お正月、寝る前のひとときにちょこちょこと読んでいきました。
スイスで山火事が起こり、その中で有名なロボット"モンブラン"がバラバラになって見つかります。おなじころ、ドイツではロボット法擁護団体の幹部がころされます。その日から、世界でも有名なロボット、ロボットに関係する人間が、ひとりずつころされていくようになります。徐々に、被害者の関係が見えはじめ、そして犯人の姿が闇に浮かびだします。
「アトム」は1巻の終わりから登場します。主人公はロボットの刑事"ゲジヒト"です。原作にも脇役としてでています。その名は、ドイツ語で"顔"、"表情"、"アイデンティティ"を意味する言葉だそうです。
4巻でもまだ序盤、PLUTOがはっきり姿を現さないとお楽しみははじまりません。原作は結末にいたるまえに作者が登場してお話をやめてしまうのですが、こちらはそれを続けるということで始めたのですから、はやく終盤にたどり着いてほしいものです。
前述のPodcastで、浦沢直樹が、自分が描く登場人物について、"エキスパートというよりも、なにか欠損している人間、そっちのほうが描きたいかもしれませんね"、"なんでおまえはこういうふうにしか動けないんだ、というようなものがドラマをつくるような気がするんですね"、"この事態、こういうふうに切り抜ければいいじゃないかというのが、本当の賢者だったら浮かぶかもしれないんだけど、それがどうしておまはこういうふうにしかやれないんだという人間"といっていて、その造形の姿勢にとても共感しました(29:24あたりから)。
「PLUTO」でも、ロボットの頭脳は"間違わない"ことをめざして作られるのが常識なのですが、アトムを作った天馬博士は「間違う頭脳こそが完璧なんだ」「その時、誕生するのだ。地上最大のロボットが」と物語のキーになる発言をしています。プルートウは、悲しいけれど愛おしい存在としてふたたび誕生するんでしょうね。
"PLUTO"シリーズ
浦沢直樹
ビッグコミック(小学館)
通常版各550円/豪華版は各1500円ぐらい
