英雄なき島―硫黄島戦生き残り 元海軍中尉の証言
海軍中尉であった大曲覚氏の証言を著者がまとめたもの。
孤立した島での絶望的な戦いが語られます。
組織だった戦闘は数日で崩壊し、あとはもう逃げ隠れるだけ、塹壕にひそみ、夜になると外に出て水たまりをさがし、米軍が残した食料を見つける。
米軍は塹壕を見つけると、ポンプで海水を流し込み、そのあとにさらにガソリンを流し入れて、ダイナマイトで火をつけたのだそうです。最初に海水を入れるのは水責めではなく、ガソリンが奥まで届くようにするための工夫で、水が押し寄せてもまだ残っていた空間は火の海になるのだそうです。ここまでされてもまだ生き残ることはなんとか可能で、夜になってから、べつの隠れ場所をもとめて移動します。
このサバイバルの描写は、読んでいてつらくもなりますが、読み応えがあります。
投降する・捕虜になるという選択肢を兵士にあたえなかったのは旧日本軍の失敗のひとつのように思います。
孤立した中ででも戦わなければならない状況というのはあるものですが、あきらかに戦えない状態になっても、まだどうにかしろというのは同胞を大事にしていないと思います。
大曲氏が本の中で、もうダメだという状況で最後におこなう「総攻撃」を批判しています。それは軍隊がおこなう組織だった攻撃ではなく、あとは自分たちでどうにかしろ=俺はもう指揮をとらないという指揮官の無責任であり、「最後まで立派に戦った」わけではないのだと、実際には日本流の言葉のごまかしでしかなかったのだということです。
日本は、集団を重んじる社会だけれど、「組織」としてはかなり未熟なようです。「集団」という言葉さえまだ的確ではなく、群れるだけ、なんじゃなかろうか。群れの論理(ムラの論理?)が機能しているから、それでも集団なのかな?
ところで、玉砕せず、ちゃんと降伏させた昭和天皇はちゃんと指揮官の責任をはたしたんじゃないのだろうか。とかいうのは詭弁か? すくなくとも、負けちゃったからって天皇陛下にすべての責任を押しつけるやからはどんだけだよと思う。
閑話休題。
その他、栗林中将への批判や、海軍のうごきのだめさ(陸戦をまったくわかっていない)や、記録にはのこっていないが現地で急ごしらえした原始的な新兵器が米軍に大ダメージをあたえたのではないかという考察などがあります。



コメントする