2011年6月26日

宮城谷昌光 『三国志』 第8巻

三国志 第八巻 関羽が戦死し、曹操が寿命をむかえ、張飛が死に、劉備も死ぬ。この巻で一区切りがつきます。

 関羽は魏を攻めるために北上、孤立しており、そこを狙った呉軍に完全に包囲されてしまいます。
 このころの関羽はかつてのように劉備の命令をかたくなに守る一途な男ではなくなっていて、劉備との連絡をとらず、独立勢力のような状態になっていました。諸葛亮の存在が劉備と関羽のの隙間を開いたのは確かだろうし、劉備が一兵卒とおなじように関羽を放置して逃げていった過去も不満だったろうし、劉備陣営お得意の流浪にも限度があってここで終わりならもはやすべて終わりだという状況もよくわかったいただろうし、関羽の態度が変わったのには複数の理由がありました。劉備のことはあいかわず好きだけど、以前のような強く結びついた生活を求めても失望させられるだけだし、こちらからは求めない、こっちから拒絶してるんだから当たり前、という姿勢をとって自分を守っていたのでしょう。そして〈リュービズム〉を貫いたわけです。

 復讐におもむいた劉備ですが、なにを倒すのか、目標を定めずに戦争を始めてしまいました。遅い進軍、長く伸びる兵站。補給路を断たれてしまったところで、最前線にいる劉備はおしまいです。
 さすが逃げ足の速い劉備は激しい追撃をかわして白帝城に逃げこみます。またしても兵はすべて捨てられます。
 劉備は都にもどることなくこの地で亡くなりました。
 多くの国民をむだに死なせ、政治でも特にすぐれて善政を敷いたこともない。
 劉備は、よい皇帝にはなれませんでした。
 作者は劉備の最期を「曹操の有為に対して劉備の無為は、秘めた徳というべき玄徳に達したか、どうか」という言葉でしめています。
 オンリーワンではありましたがナンバーワンにはなりませんでした。それでよいなら、よいでしょう。

 以降は、諸葛亮が活躍していきます。『三国志演義』ではすでに有名人になっていますが、歴史ではこの時点ではまだ無名です。

"三国志〈第8巻〉"
宮城谷昌光
文藝春秋
1700円
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2011年6月16日

『ワイヤー・イン・ザ・ブラッド 2008スペシャル』

『アナザークリムゾンの祈り(Prayer of the Bone)』
舞台は、いつものイギリスの架空の都市ブラッドフィールドではなく、アメリカのテキサスです。トニーは自分が鑑定した男について裁判で証言するためにアメリカに行きました。その男は、イギリスで未成年者への性的暴行を行いましたが、イラク戦争でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったためという米軍の主張により罪は問われず、本国へ送還されました。しかし男は、もどってきてすぐに自分の妻と子を殺してしまったのでした。トニーは自分の診断にもとづいて男がPTSDではないと証言をしますが、弁護側の話術にのせられ失敗。べつのアプローチで検察に協力することにします。

映像がだいぶうるさくていらいらさせられます。フラッシュバック的な映像効果を重要でないところでもやたらつかいまくるんで本当につかれます。
映像は無駄がおおくて残念なのですが、ストーリーは良いです。見ごたえのある推理ドラマになっています。

2011年6月 8日

『告白』

告白 【DVD特別価格版】 [DVD]  年度末、これで学校を辞めると宣言した教師は、自分の娘の死を語り、娘を殺した犯人であるふたりの生徒について語り始める。……

 登場人物それぞれの告白によって、その登場人物とこの物語の別の側面が見えていくというタイプの映画です。告白には、ウソもあって、ウソがばらされることで物語に別種の変化がつきます。

 映像は綺麗で、シュールレアの絵画のように現実的で、しかし微妙におかしい感じが物語とよく会っています。

 ダーティーで茶番だらけだけど、とてもいい映画です。

 復讐劇なので、例のごとく「復讐は何も生まない」と批判されることでしょう。(そんなことをわざわざいわれなくても、やっちゃいけないことだとみんな何となく知っているんだけど)。
 戦争と同じで、何かを生みだすためにしてるんじゃないんだけど。(ああ、でも、何かは生まれているように見えます。まったく何も生みださないわけではありません)。
 それに、加害者の人権ばかりが守られる社会なのだから、復讐者となってこちらも加害者になれば、みんなに守ってもらえます。
 守らなくてはいけない大切なものがそこにあるんでしょう?
 復讐にも、その始まりの行為にも。

"告白"
監督: 中島哲也
出演: 松たか子、西井幸人、藤原薫、橋本愛、木村佳乃、岡田将生 ほか
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2011年6月 7日

『ワイヤー・イン・ザ・ブラッド 5thシーズン』

 心理学者トニー・ヒル博士が活躍する犯罪捜査シリーズの第5シーズン。
 プロファイリングという名のトニーのひとりしゃべりで事件は解決されていくので、ジャンルとしてミステリーではありません。
 トニーという解説者つきのドラマといった感じでしょうか。
 事件解決はトニーしだいなところがあるのでそこで好き嫌いがでてくるようです。

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『アンバーアラート(The Colour of Amber)』
黒人少女が誘拐される事件が発生。捜査チームは少女の命を優先して「アンバーアラート(→アンバーアラート:Wikipedia)」を発動。すぐさまメディアに情報を流し始めます。トニーも捜査協力を要請されますが、状況からはふたつの相反する犯人像が浮かびあがってきます。予想しているような児童誘拐事件とは何かが違っているようです。

『セレモニー(Nocebo)』
"呪い"をテーマにしており、シリーズの最初のころに近い味わいがあります。呪いの現代風解釈がうまく消化されていると思います。ここでとりあげられるのは、呪いの人形などを使って、呪っていることを相手に見せていくタイプの呪いですが、呪っていることを隠しておくタイプの呪いもあります。この要素もくわわっていたらどういうストーリーになっていたでしょう?

『プリテンド(The Names of Angels)』
女性がを狙った強姦殺人が起こり、その死体には、以前同じように殺されていた女性の衣服が着せられていた、という事件をめぐったストーリー。サブエピソードとして、トニーがかつて関わった事件の犯人が刑期をすませたのち施設で継続治療していたがそこを抜けだしトニーに連絡を取ってくる話が並行して語られます。名前・役割という観点でちょっとばかり関係してくるのかなといった感じ。

『シグネチャー(Anything You Can Do)』
老女を狙った殺人事件が起こり、トニーは再犯の可能性を危惧しプロファイリングにいそしもうとしますが、捜査チームのリーダーであるアレックスとの仲が急に悪化し、捜査から外されてしまいます。その不仲は、ひさしぶりにアメリカからもどってきたトニーの友人のしわざでした。
事件の謎の難易度設定が的確。鼻先につねにエサがぶらさげられている状態で、何となく予想はつくけれど確信にはいま一歩というところで、ラストまで引っ張っていってくれます。

参考リンク

Wire in the Blood - 英語版Wikipedia