"現代社会は、企業を通して支配される"と主張するノーム・チョムスキーのインタビューをまとめた本です。
金を持っている人たちが、低賃金で他の人々を働かせ、金を儲ける。金持ちの横暴は、まかり通る。金持ちが自分たちに有利になるようにルールをつくる。
「それでなにがわるい?あたりまえじゃない。金持ちは、何もしなくせに権利ばかり要求してくる貧乏人どもにいろいろとたくさん恵んでやっているではないか」
そんな反論はすぐに思いつくし、まさしく正論でもあります。
しかし、金持ちが強い権力を得る社会構造であることを否定するものではありません。
しかも、そこに横暴や欺瞞が生まれないだなんて誰も思わないでしょう。
構造があって、意志がくわわれば、かんたんに強権体制が実現します。
そして、民主主義は、権力のある階級をおびやかさない範囲でだけゆるされている。
支配されている側の人間でさえ、権力者にたてつこうとするひとたちに、いい顔はせず、利口に生きろとつぶやいている(Twitterで)。
デモをしているひとたちに対する彼らの言いぐさ、見ましたか?
まるで、独裁体制の世界を描いた小説の人々のようではないですか。たてつくのはバカだといっている彼らこそ。
チョムスキーはさまざまな例をあげて、この世界の「秘密」と「嘘」と「民主主義」を見せてくれます。
インタビュー集というのは、むずかしいことはあまり語られず、やさしく解説していることが多いので、初心者が読むのに適しています。
また、すでに専門知識をもっているひとが、あらためて原点にかえって自分をながめなおし、再構築してみるのにもいいと思います。
ネットでも政治や社会についての話や言い争いがけっこうありますが、意外にも、チョムスキーがいっているようなことを論点にあげるひとはほとんど見かけません。
チョムスキーの意見に賛成であっても反対であっても、新鮮なヒントになることはまちがいありません。
たとえば、公共の乗り物についての考え方も、バスや電車などが自家用車の普及によって消えさってしまうと、移動手段のほとんどが資本によってコントロールされてしまうと注意しています。放送の公共性についても、メディアが商業主義にながされてしまうと、情報のほとんどがコントロールされてしまう危険性があります。
資本による力の介入を考えると、民営化できるものは民営化した方がいい、とは簡単にいえないことがわかります。
まめ知識もたくさん書いてあるので、ちょこちょこつまみ読むだけでも、おもしろいと思います。たとえば、「全体主義の実例を見たければ、"会社"を見ればいい」とか。会社は、社員全員がそれぞれの立場で、ひとつの目標にむかって行動します。そうすることが正しく、誰もがうたがいもなく信じ行動しています。信じられない人やきちんと行動できない人は出て行くか首となって排除されます。まさしく全体主義です。
チョムスキーは、この権力、構造に対抗するには、「団結すること」だけだと言っています。個人ではそれを嘆くことしかできない、と。
同感です。権力は人と人との関わりのなかにできるものですから。それ以外にはありません。
"秘密と嘘と民主主義"
ノーム・チョムスキー
成甲書房