2004年7月17日

天帝妖狐

4087473422.09.MZZZZZZZ.jpgふたつの小説がおさめられています。
ひとつめは「A MASKED BALL」。
高校のトイレの落書きから見知らぬ学生との交流がはじまる。やがて、この落書きのきっかけをつくったカタカナだけで文章をつづるひとりが狂気をはらんだ過激な行為を構内でくりかえすことになる。
もうひとつは「天帝妖狐」。
ひとりで〈こっくりさん〉をしていた少年がであった霊〈早苗〉に死への恐怖から永遠の命とひきかえに自分の体をゆずりわたしてしまう。

「A MASKED BALL」の犯人(カタカナの落書きのひと)は、結末近くで明かされたそのひとなのか、それともべつのあのひとなのかとちょっと考えてしまいました。考えすぎかな。
また、巻末の解説にありますが、ネットワーク物の小説でよくつかわれている匿名性は、こういうトイレの落書きを題材にして充分に書けてしまうんですね。ネット物のさらなる発展を望みたいものです。

「天帝妖狐」の結末の会話のすばらしさ。胸をしめつけられました。

"天帝妖狐"
乙一
集英社文庫
460円
Amazonアソシエイト

2004年7月11日

ファファロ! ニャモゴデン! 「アラーの神にもいわれはない」

4409130269.09.MZZZZZZZ.jpg「アラーの神にもいわれはない」——アラーの神さまだってこの世のすべてに公平でいらっしゃるいわれはない。これが決定版タイトルと冒頭に書きしるしてはじまる少年兵として生きた架空の男の子が語る物語。
西アフリカ、リベリア・シエラレオネの終わることのない内戦。ぐちゃぐちゃな世界。殺してうばうのがあたりまえになってしまった社会では、たよるべきものがいないちっちゃな子どもたちは、もう少年兵として生きるほかない。
語り手の男の子、ビライマは、悪態をつきながらも、子どもを主人公かつ語り手とした童話のような感じで話をすすめていきます。

続きを読む "ファファロ! ニャモゴデン! 「アラーの神にもいわれはない」"

2004年7月 5日

うつくしい子ども

4167174057.09.MZZZZZZZ.jpg行方不明だった小学生の女の子が学校の裏山で遺体となってみつかった。犯人は弟だった。弟がなぜそういうことをしたのか、その理由を確かめたくなった。

全体的に学園物のスタイルで展開。補助的にその地方の新聞記者の視点からなる章がいくつか挿入されています。
結末のふたつのエピソードがなかなかすばらしく、うまく小説を終わらせています。また、タイトルの決め手となったであろう主人公の母親のセリフなど、要所要所をうまくしめていて、小説を形よくしています。

"うつくしい子ども"
石田衣良
500円
Amazonアソシエイト