2004年11月21日

暗いところで待ち合わせ

4344402146.09.MZZZZZZZ.jpg視力を失った若い女ミチルの家に、殺人事件の犯人として追われている青年アキヒロが逃げこむ。音を立てずにひっそりと気配をころして部屋の隅にうずくまる。ミチルはひとの存在に気づいたが、知らないふりをしてやりすごす。

ミチルが視力を失ったのはまだ数年、ずっとふたりっきりで暮らしていた父親も去年亡くなってしまっていた。元来、引っ込み思案で、親しい友だちはひとりいるきり。アキヒロも孤立しがちな青年だった。仲間がつくれず、いまの職場でも誰ともうちとけず、いつもひとりでいた。

孤独を知るふたりが、おたがい気づいていながらも、ほんとうはミチルの家にはほかにはだれもいないんだよという約束があってそれを守らなければいけないというかのような、微妙なふしぎな関係をつくりあげてゆきます。

人間関係、生き方、そして発端となった殺人事件について、揺れうごく感情、状況をたんねんに書いていっているところがとてもいいです。

"暗いところで待ち合わせ"
乙一
幻冬舎文庫
520円
Amazonアソシエイト

2004年11月20日

カラシニコフ

4022579293.09.MZZZZZZZ.jpeg世界でいちばんつかわれている銃、AK47。正式名称、一九四七年式カラシニコフ自動小銃。どの紛争地帯にいってもこの銃にかならず出会うため、悪魔の銃とよばれています。

銃のすきまに雨水や砂ぼこりがはいっても動作するタフさ。銃は精密機械なのでこんなことはありえなかった。つかいっぱなしOKなのだ。
連射がきくので、とりあえず敵にむかって撃っておけばいい。あいてが身を隠しているうちに近づいていって絶対はずさない距離で敵を倒せる。百発百中の腕前はいらなくなった。
この容易さは、女、子どもも、武器をとって戦える兵士にした。

ゲリラは学校を襲い、子どもたちをさらい、脅しつけていうことをきかせ、子ども兵にする。

前半は、この子ども兵についてと、この銃を開発したカラシニコフ本人へのインタビュー。
後半は、紛争の実体。あってないような国〈失敗国家〉で起こったこと。「国がない」というのはどういうことなのかがわかります。

アフリカの民族紛争が「植民地時代の古い体制を倒して民族を解放する自由への戦い」ではぜんぜんなくて、ダイヤや油田などの莫大な富を生みだす地下資源をめぐっての盗賊どもが争いだということ。大統領などといっても、国のことなどなんにもしない。ほんと、盗賊の親玉だというのにはショックを感じました。

非常にさくさくと読みすすむ、読みやすい文章です。

"カラシニコフ"
松本仁一
朝日新聞社
1470円
Amazonアソシエイト

また、関連するおすすめ本に、この本にでてくるリベリア・シエラレオネ内戦でも子ども兵を題材にした小説「アラーの神にもいわれはない」があります。レビューをこちらで書いていますが、まえに書いたものなんでちゃんとかけてるかなー。

2004年11月 9日

ビビを見た、をみた!

4835440862.09.MZZZZZZZ.jpeg「いまからごご七じまでその目をあけておまえにおもしろいものをみせてやろう」
ふしぎな声がきこえてきて、少年ホタルの眼はみえるようになった。生まれてはじめてみる世界。お母さんの眼はなぜかみえなくなってしまったようだ。そして、町にサイレンが鳴りひびき、テレビのニュースが、敵が来るので列車で避難せよ、と告げる。

冒頭から不穏な空気漂うこの童話は、残酷童話というのとはちょっとちがう。みんな幸福になりましたみたいな作りすぎたお気楽な童話に反発したのか、ただひねくれているのか、ブラックで皮肉な童話を書くひともいるけれど、それもまた作りすぎで、心に暗いものをかかえたひとがにやにや笑うというお気の毒な状況をつくりあげるだけ。たしかに、ホタルの眼がみえている時間は絶対で、ずっと眼がみえるようにはならない。無情なタイムリミットはあるけれど、限りある時間のなかでつかみとった美しさがあります。それって、とても現実のようでしょう? 現実の神さまのようでしょう? 神さまは気やすく願いをかなえたりしないし、みんなを幸せにする結末を用意したりもしない。「でも」美しいものをみせてくれる。

"ビビを見た!"
大海 赫
ブッキング
1890円
Amazonアソシエイト

2004年11月 7日

夜のフロスト

4488291031.09.MZZZZZZZ.jpegインフルエンザが猛威をふるい、人手がまったくたりないデントン警察。ばかは風邪をひかないらしく、犯罪は休むまもない。新聞配達のアルバイトをしていた少女が行方不明になり、老人を狙った窃盗事件は連続殺人へとエスカレート、個人の秘密を暴いた手紙が多数の人間に送りつけられやがては自殺者が。

フロスト警部シリーズ第3弾。
フロスト警部の活躍は、おまえ答え知っていてやってるんだろうというのがみえみえな読者置いてきぼりの名推理ではなく、ちょっとドジなので試行錯誤の過程がよく見えるし、「こいつが怪しい」と勘を働かせてくれるタイミングが読者とおなじなのでいっしょに事件を追っている感覚が味わえます。

続編の翻訳早くでないものかねえ。シリーズ読み終わっちゃったよー。

"夜のフロスト"
R.D.ウィングフィールド
1365円
創元推理文庫
Amazonアソシエイト