2005年8月19日

公明党・創価学会と日本

4062130106.01._PE_SCMZZZZZZZ_.jpgこちらで紹介した「公明党・創価学会の真実」とペアで出されています。
「公明党・創価学会の真実」で書かれなかった、与野党伯仲時代(昭和47年から平成3年)、消費税〜リクルート事件〜湾岸戦争と揺れ自民党・社会党体制が崩れる時期をより詳細に記したものです。このとき、著者の平野さんは衆議院事務局の役人です。公明党へのアドバイスは、国会の状況分析から、とるべき行動まで、もはや軍師的な立場になっています。当時の日記、メモから再構成されたもので、国会運営の裏側がよくわかります。
本書での公明党・創価学会批判は序章と終章のみで、本編とはスタンスが異なっていて、そのため内容が直接にはつながっていません。本編部分は"民衆の救済"のために輝いていたころの公明党です。
「公明党・創価学会の真実」と二冊で一冊という感じもします。もともとは一冊の本にする予定だったのかもしれません。記録と批判でふたつにわけた構成ほうがよかったような気もしますが、でもそうすると批判の方だけ"つぶされ"てしまうんでしょう。

公明党批判だけではなく、政治家の国会での行動の全貌がよくわかるので、かなりおすすめです。
たとえば、自民党単独の強行採決がありますが、こんなのはニュースみているかぎりでは、"横暴"、"ひどい"というだけの感想をいだくとおもいますが、じつは野党側もそれは織り込み済みなんですね。かつての野党はそのあとに配られるお金を期待してわざと議論を紛糾させたりしていたそうです。そういうひどいものでなくとも、支持者にいいわけできるだけの意見を通して、あとは自民に強行採決させてしまうという手もあるわけですよ。

政治を知りたい中高生にもいいと思います。

"公明党・創価学会と日本"
平野貞夫
講談社
1680円
Amazonアソシエイト

2005年8月 8日

「戦争責任とは何か」

4121015975.09._PE_SCMZZZZZZZ_.jpg日本の戦争責任が話題にのぼるとすぐに"ドイツはきちんと謝罪してきている。それにくらべて日本はなにもしていないといっていい"というようなことがいわれます。
著者は新聞記者としてドイツに赴任中に疑問を感じ、また帰国直前にミュンヘンで開催された「国防軍の犯罪」をめぐる展示がドイツ国内で激しく反発をうけている事態に遭遇。フリーになってから、あらためて調べてみると、ユダヤ人虐殺についての反省は積極的にしてきたものの、「戦争」そのものについてはどうやらほとんど議論さえしてこなかったことをしります。

ドイツは、責任をナチスにおしつけ、ナチス以外はその独裁の犠牲者であったかのように考えるようになります。

もうひとつ、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)についてのみ語られ、戦争そのものがどうであったか、つまりニュルンベルク・東京裁判で「A.平和に対する罪」として問われた罪、それから、民間人の殺害など旧来からある戦争犯罪、ニュルンベルク・東京裁判で「B.通例の戦争犯罪」として問われた罪、についてはすっかり忘れられていました。

ドイツと日本では、当然、戦争でしてきたこともちがいますが、その過去をどうとらえるかもちがっていました。
最近では、日本の政治家や評論家も、「ドイツはきちんと謝罪している」と非難されても、「ドイツはナチスのせいにしてきた」と指摘するようになってきています。

ドイツを反面教師とするならば、日本はなにかにすべての責任を押しつけないことが重要でしょう。それとも、なにかに責任を押しつけてちょっぴり逃げ道をつくっておいて徐々に過去を反省すべきなのでしょうか。わたしは、もうなにかに責任を押しつけている時期ではないと思います。すくなくとも実際に戦争をしてきたわけではない世代はそんなことをする必要はありません。逃げ道は最初からきちんと用意されています。

話題がずれますが、戦争について話しあうとき、実際の被害者でもないのに、被害者以上に強い憎しみを「なにかに」ぶつけようとしているひとがいますが、あれはどういうことなんでしょうか。想像して、被害者意識をもつ。そう、かならず、だれもが被害者になる。これはドイツがやってきたことと似ている気がします。

"〈戦争責任〉とは何か — 清算されなかったドイツの過去"
木佐芳男
中公新書
819円
Amazonアソシエイト

2005年8月 1日

嗤う伊右衛門

4043620012.09._PE_SCMZZZZZZZ_.jpg京極夏彦はブームのときに分厚い新書を買って読もうとしたのですが、出だしから白日夢みたいなぼんやりとした描写が延々と続いていたので飽き、べつの本を読みだし、それっきりになっていました。どんな本でも、とてもおもしろかったり、ほんとうに役立つことが書いてあれば、ほかのだれかを読んでいて、そのことを教えてくれるだろうから、いまは読まなくてもいいか、という感じです。

ちょうどいま角川文庫の夏のキャンペーンがおこなわれていて、キャンペーン対象の本の中から二冊買うと、ブックカバーがもらえるそうなので、どの本がおもしろいんだろうとネットをみたら、この「嗤う伊右衛門」がおすすめになっていたので、読んでみることにしました。

四谷怪談なのですが、幽霊はでてきません。怪談の元になったストーリーを描いたような小説です。因縁、隠された事実があきらかになり、それを伏せておこうとして、こじれ複雑になり、負債が抱えきれなくなったように破局をむかえる。

登場人物をうまく描いていて、なかなかおもしろい。描写は幻想的であやしげでいいですね。近親相姦テーマがくりかえしあらわれ、ひとりの人物を指さす強烈さ。生活はまったくうまくいかなかったけれど、伊右衛門と岩の真摯な愛。うまい。
む?と思ったのは、伊右衛門と岩が気持ちとは裏腹にどんどん険悪になっていく会話のシーンがあるのですが、いきなり思っていることと言っていることにギャップがありすぎて、ちょっと不自然でした。

"嗤う伊右衛門"
京極夏彦
角川文庫
580円
Amazonアソシエイト

クライム・ウェイヴ

4167661934.09._PE_SCMZZZZZZZ_.jpgルポルタージュ、短篇小説など11本が収録されています。
すでにエルロイの小説を読んでいるひと向けだとわたしは思います。

エルロイは子どものころ母親を何者かに殺されていて同様の事件に執着しています。「ボディ・ダンプ」は類似の事件を追ったもの。「マイ・マザーズ・キラー」は母親の事件の警察の記録をみたときのもの。「グラマー・ジャングル」も類似の事件のルポ。
「ハッシュ・ハッシュ」ティファナ・モナムール」はエルロイの小説でおなじみの派手なゴシップをあつかうタブロイド紙の記者を主人公にした短篇。
「ハリウッド・シェイクダウン」は、エルロイが好きなディック・コンティーノを主人公にした小説。そのまえにはいっている「過去から」は短篇集"ハリウッド・ノクターン"に掲載されているものとほぼ同様のコンティーノ好きなのはなぜかの告白。
「セックス、虚飾、そして貪欲」は、O.J.シンプソン事件への短評。鋭い考察です。
「ブルドックス」はロサンゼルス郡保安官事務所殺人課のルポ。
「金ぴかの街のバッド・ボーイズ」は、映画化された"LAコンフィデンシャル"の監督の人物像とLAについてのべたもの。
「レッツ・ツイスト・アゲイン」は、ジュニア・ハイスクールの思い出とその同窓会についてのもの。

"クライム・ウェイヴ"
ジェイムズ・エルロイ
文春文庫
1050円
Amazonアソシエイト