2006年6月29日

後藤繁雄「スキスキ帖」

Amazon.co.jp:スキスキ帖LIFE WORKS (3): 本 編集という仕事でクリエイティブな活動(雑誌、本づくり)をしている後藤繁雄さんのサイトで連載されたエッセイ・日記をまとめたものです。

 食べ物の話はのきなみおもしろい。フルーツに眼がないようです。大阪にある手作りのミックスジュースのお店。ミキサーに手づかみで氷をいれて、桃をナイフでカットして、缶詰のみかんn、コンデンスミルク、ジュース、卵の黄身、そして謎の蜜を入れる。うまいんだそうですよ。おいしそうでたまらなくて、はうう、となってきます。

 それから、どこかに書いてあったんだけど、それがどこだか見つからない(「ぼくはいやだ」のところかと思ったけどそこにはなかった)。"叱る"ということについて、それが表面的なものなら、それは"嘘(うそ)"をついているんだっていうようなことが書いてありました。いばって批判しているくせに、いつまでもくりかえしくりかえしねつ造・情報操作の事件を起こす朝日新聞だとか、まるっきり嘘つきだよね。自分の父親もそうだな。子どもを叱るとかいって、ひとに文句つけてることはぜんぶ自分が持ってる欠点だし、殴ったり怒鳴ったりしてるのもしつけじゃなくて、外でイヤなことがあったのを女や子どもを怒鳴りつけて殴り倒して憂さを晴らしていただけだったし(理不尽だし、こないだいってることと反対のことをしろといわれたり、こちらはとまどうしかなかった)。なんだ、ただの嘘つきだったのか。後藤さんの文章を読んで、心が軽くなりました。

 それから、自分が好きなオリバー・サックスの「火星の人類学者」を、後藤さんも好きだと書いているのをみつけてうれしくなったり。

 はじめての後藤繁雄さんだったら、この本からはじめないで「独特老人」とか「skmt」「僕たちは編集しながら生きている」などのほうがいいかも。

"スキスキ帖"
後藤繁雄
アートビートパブリッシャーズ
2310円
Amazonアソシエイト

2006年6月28日

環境危機をあおってはいけない

Amazon.co.jp:環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態: 本 環境保護団体や個人は、自分のいうことに注目してもらいたいためなのか、やたら大げさに騒ぎたてる傾向があるし、一部をのぞいては根拠を示さずに物を言っているところもあります。だから、本当のところ、環境はどうなっているかはわからないし、当然、彼らの問題解決能力にも大きな疑問を感じます。

 そこでなにかいい本がないかとさがしてみつけたのがこの本です。値段が高いので、ちょっと迷いましたが、答えがみつかるならばと思いきって購入しました。

 著者は、ある日雑誌で経済学者のジュリアン・サイモンが、(環境保護活動家の考え方は)先入観とダメな統計に基づくものでしかない(つまり正しくない)、といっているのを読んで、なにをーと思って調べていったのだそうです。彼は、大学で統計学を教えていたし、グリンピースを支持するタイプだったからです。実際に調べてみると、たしかにサイモンのいうとおりで、自分が思いこんでいた知識と現実は違っていることを知ります。


 さて、それでは、なにが書いてあったか、を大まかに書いてみます。

 まずは生活環境。寿命はのびているの? 人口はどれくらい? ひとが増えすぎちゃうっていってるけど将来はどうなるの? 食料はたりるの? 追いつかなくならない?
 よくいわれる森林破壊について。森林はいうほどなくなってはいないこと。どれだけ森林があれば地球はだいじょうぶなのか、など。
 それから、エネルギー問題。ずーっと、ずーっとまえから、あと何年で石油はなくなっちゃうよ、っていわれつづけてきたけど、そうなってないのはなぜか、について。また、そのほかの地下資源についてもおなじ問題をあつかっています。
 そして、公害について。大気汚染、酸性雨、水質汚染、ゴミの捨て場(なくなっちゃわないの?)。その現実もまた、われわれが思っていることとはちがうのがわかります。
 それから、農薬によるガンの危険性(タバコやアルコールにくらべたらないもおなじだって!)。そして環境ホルモンについての本当の話。
 そして、生物多様性。どれくらいの種が絶滅しているのか。
 そして、地球温暖化の実際について大きくページがさかれています。京都議定書を各国が遵守しても2100年での温度上昇を6年遅らせるだけの効果しかない!、というかそれじゃあ効果がないのとおなじなで、削減につかわれる費用を二酸化炭素をださない代替エネルギーの開発・技術革新(こっちのほうが安ければみんなこっちをつかうようになるでしょ)につかったほうがいいみたい。

 けっこうたくさんのことが書かれているので、読み終えるまで時間がかかりました。たぶん、興味あるテーマから読み進めていっちゃったほうがいいです。

 データの扱い方や問題対処の方法(優先順位の付け方、コストと効果の考え方。いろんなことすべてをいっぺんに解決できないから)などは、これからの環境保護のために有用でしょう。環境活動しているひとに読んでもらいたいけど、でも感情的にうけつけてくれないかも。まちがってるっていわれてるんだから。

"環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態"
ビョルン・ロンボルグ
文藝春秋
4725円
Amazonアソシエイト

2006年6月27日

世田谷一家殺人事件—侵入者たちの告白

Amazon.co.jp:世田谷一家殺人事件—侵入者たちの告白: 本 こういう事件のルポルタージュはだいたい推理で終わってしまうものなのですが、この本は犯人を確定しています。

 犯人は、留学生を中心とする若い外国人たち(本の中ではイニシャルになっていますが個人を確定)。目的はカネ。犯罪を目的としたグループをつくりあげた彼らの最初の仕事だったそうです。

 警察が犯人を逮捕できなかった理由についていくつか言及されています。管轄の縛りが強く、よそのことはよそのことという体質が、複数の事件を関連づけて捜査できなかったこと。個別の事件に関しては、当時はこうした犯罪が想定されていなかったためと、遺留品の多さからすぐ解決できると高をくくっていて重要な情報を黙殺してしまったことなどがあげられています。 筆者は、刑事や外国人社会にくわしい人物からの情報をたんねんにつなぎ合わせて、犯人にたどりつきました。

 恐ろしいことがまた起こるのでしょう。
 どうしたらとめられるでしょうか。

"世田谷一家殺人事件—侵入者たちの告白"
齊藤寅
草思社
1470円
Amazonアソシエイト

2006年6月26日

黒田硫黄「大王」

Amazon.co.jp:大王Cue comics: 本 著者のプロデビュー作ふくめた短篇集です。変わり種が多いです。マイナー系雑誌のマンガのテイストが強く、そういうのが好きな方にはちょうどいいと思います。

 手塚治虫のマンガをリメイクした「メトロポリス」というのがあるんですが、自分は手塚治虫のマンガは苦手(ブラックジャックとどろろは好きだけどほかのはきついですぐったりです)なので原作をしらず、どこがちがうのかわかりませんでしたが、なかなか変わっていて、ええっ野球マンガ? あ、やっぱりちがうのか、っていう展開させぐあいがおもしろかったです。

 天狗党の天狗みたいな雰囲気をもつ元天才少年でいまはヘンな人な中年男性を観察する女の子のマンガ「あさがお」は子ども社会がリアルに描かれていてこれもよかった。なんだか器用に世の中渡っていっちゃいそうな女の子で、そのせいで後味が悪くなりそうなのを、ラストのうまさで、すがすがしいものに変えています。

"大王"
黒田硫黄
イースト・プレス
1049円
Amazonアソシエイト

2006年6月21日

黒田硫黄「茄子 3」

Amazon.co.jp:茄子 (3)アフタヌーンKC (314): 本 短篇集「茄子」はこの3巻が最終です。富士山頂上に隕石が落ち、怪事件が起こる。怖いんだかほのぼのなんだかふしぎな雰囲気をもつ作品からはじまります。そして、いつもの田舎にひっこんで畠仕事をしている元教授のお話がシリーズでつづきながら、短篇がぽつぽつとあいだに入ります。はじめてのキャラ、まえにみたことがあるキャラが登場。全体の配分にバランスがとれています。
 最後の話を読んでいて寂しい気持ちになってきました。キャラクターに愛着があります。とても魅力的です。みんなちょっぴり(多いひともいますが)奇妙なところがどこかしらにあって、小さな傷みたいに光にかざしてみるとわかるんです。それが物語となって、キャラの個性になって、味わいがでてきます。

"茄子 3"
黒田硫黄
講談社(アフタヌーンKC)
550円
Amazonアソシエイト

2006年6月18日

黒田硫黄「茄子 2」

Amazon.co.jp:茄子 (2)アフタヌーンKC (295): 本 1回、2回の単発もありますが、シリーズでつづいているものがあることが、この短篇集に、より深い愛情をもたせる理由になっていると思います。

 前後構成の短篇で時代劇が入っています。江戸っ子の初物好きが高じて、期日が来るまではご禁制になってしまったナスをめぐるものがたりです。江戸に出てきたばかりの田舎侍と、遊び人ぽいちょっと悪そうな男と、天然素朴でぼけ役に徹する太っちょ、の3人組のほのぼのしたストーリーなんですが、あとで一転します。

 メインになっている、田舎で畑仕事をしている元教授のシリーズには、1巻の単発に登場したお父さんが借金かかえて逃げちゃった女の子がでてきます。下の兄弟といっしょに田舎の親戚にあずけられた設定。この女の子、なにかしていなきゃ居づらいようなことをいいますが、みていくと状況よりも性格のような気がします。映画の撮影がきて、稼げないものかとあくせくします。

 巻末のおまけページにはナス料理が紹介されています。「干して揚げて炒め煮する」のがとてもおいしそうです。

"茄子 2"
黒田硫黄
講談社(アフタヌーンKC)
550円
Amazonアソシエイト

2006年6月15日

黒田硫黄「茄子 1」

Amazon.co.jp:茄子 (1)アフタヌーンKC (272): 本 ナスをテーマにした短篇集です。ナスをテーマといってもちょいとでてきたりするだけのものもあります。そういうのってでもよくあるからべつにふしぎでもないでしょう? つづきものもあれば単発のものも入っています。
 1巻には、以前アニメ化された、自転車レースをあつかった「アンダルシアの夏」が収録されています。これはドラマ性が強く、夢中になります。自転車レースってよくわからなかったんですが(競輪じゃなくて、ツール・ド・フランスみたいなやつ)、順位は個人で決まるんだけど、チーム性がかなり強いゲームのようです。エースを優勝させるために、ほかのメンバーがいろいろ仕掛けるわけです。先行する逃げの集団にまじって流れをコントロールしたり、ただの風よけになったり。優勝したらみんな賞金を山分けだそうです。

 好きな話は、田舎にひっこんで農作をしている元教授(?)のシリーズ。このおっちゃんの親しい女性が睡眠をとるだけに訪ねてくるんですが、このひとの性格がまた女性独特で、なんかふしぎーな、一本だけゆれている花のようなわからなさかげんがうまく描かれています。
 また、このおっちゃんが、ほかのひとから、なんで農家なの大自然のなかのほうがいいか?と訊かれたときに「なんだよ大自然て」「畠(はたけ)は最初の工場だぜ」と答えるセリフに共感しました。自分の住んでいるところは田んぼだらけなんですが人工的だと思います。昔は、鉄筋コンクリートの建築物がたちならぶところを"墓場"という表現がよくありましたが、それが墓場なら、これも墓場だよ、とわたしは思います。

"茄子 1"
黒田硫黄
講談社(アフタヌーンKC)
550円
Amazonアソシエイト

2006年6月 6日

原典 ユダの福音書

Amazon.co.jp:原典 ユダの福音書: 本 「ユダの福音書」は、ユダが書いたものではありません。著者は不明。ユダを主人公とした物語です。この「ユダの福音書」を批判している書物だけがあり、その実物は見つかっていなかったのですが、今回の復元によって(発見は1970年ごろ)、その書物にまちがいないだろうということがわかりました。ユダの福音書が「本物」といわれるのはその意味においてです。(ちなみに新約聖書におさめられている4つの福音書も著者はタイトルについている名の本人によるものではありません。→参考:Wikipedia マタイマルコルカヨハネの福音書)

 200ページぐらいのやや薄い本のうち、注釈をふくめた「ユダの福音書」の訳は50ページほど、けっこう短い文章です。読んでみてもさほどおもしろくは感じられませんが、その後におさめられている4名の学者による解説を読んでいって、歴史や内容のバックボーンがわかってくると、おもしろくなってきます。

 物語の背景にあるのは、グノーシス主義、と大まかに呼ばれるもので、これはキリスト教以前からあるもので、ユダの福音書は、ユダヤ教のグノーシス主義からキリスト教の味つけをくわえられて作られたもののようです。
 グノーシスによれば、この世界は、神性なるすべての存在がつくられたあとに、無知なる愚かな存在によって造られた愚劣な世界で、この世界の真実を知ることによってのみ、肉体から逃れ、至高の王国へとたどりつくことができると考えられています。
 もともとは、完全なる善なる存在である神によってつくられた世界がなぜこんなにも悪にまみれているのか、という神学的な疑問から誕生したもののようです。グノーシスの世界観はそのひとつの答えです。この世界は愚かな創造主によって造られたのだ、と。神性な魂を宿している人間はそれを超えられるのだ、と。イエスもそのひとりで、ユダもまたそうであり、彼はイエスから真実を教えられれ、そしてイエスが肉体を捨てる手助けをしたのだ、と、そういうお話です。

 物語としてはおもしろいので、創作にはプラスになるでしょうが、これをまともに信じるひとがでてくるとかなり問題です(超能力とかとおなじように)。カルトができるだろうな、と思います。

"原典 ユダの福音書"
ロドルフ・カッセル、マービン・マイヤー、グレゴール・ウルスト、バート・D・アーマン
日経ナショナルジオグラフィック社
1890円
Amazonアソシエイト

2006年6月 5日

大日本天狗党絵詞 4

Amazon.co.jp:大日本天狗党絵詞(エコトバ) 4 (4)アフタヌーンKC: 本 シノブと"おじ"は、天狗に対する秘策を手に入れ、東京を占拠する天狗党への決戦を挑む。「大日本天狗党絵詞」最終巻です。

 カラス天狗の刺客との殺陣がすさまじく圧倒されます。強烈な緩急があります。闇にまぎれての暗殺者ぶり、忍者っぽさは、天狗のイメージ、とくにカラス天狗のイメージがでています。

 前半、"おじ"の眼力を恐れて隠れてばかりでどんどんかっこわるくなっていった"師匠"も天狗らしい姿を見せてくれます。

 存在論っぽいことが議論され、天狗とは何かにみんな迷い、我を失っていくわけですが、これは天狗じゃなくても考えることで、すくなくとも今の人間がどう生きるか、生きがいをみつけようとするときには、こんな感じになりますよね。

"大日本天狗党絵詞 4"
黒田硫黄
講談社(アフタヌーンKC)
530円
Amazonアソシエイト

大日本天狗党絵詞 3

Amazon.co.jp:大日本天狗党絵詞(エコトバ) 3 (3)アフタヌーンKC: 本 よみがえった伝説の天狗"Z氏"は巨人の体で町へ上陸。"師匠"は日本を天狗の国にすることを望むが、天狗の同士でも意見はひとつではなく、"比良井"は革命でも起こすかのようなそんな古くさい考え方を批判する。議論の中、邪眼をもつシノブの"おじ"を見つけた"Z氏"は、町ごと"おじ"をふきとばし、みずからも姿を消してしまう。ふたたび目的を失ったシノブはこの土地を離れ、遠い北海道へと旅をし、男と知り合いそこで暮らすことになる。

 インターバルを置いて、第2部の開幕です。
 "Z氏"と"師匠"を担ぎあげるグループは東京を占拠します。
 天狗の国を批判した"比良井"は裏切り者として追われ、人間として暮らしているシノブと出会います。

"大日本天狗党絵詞 3"
黒田硫黄
講談社(アフタヌーンKC)
530円
Amazonアソシエイト

2006年6月 1日

大日本天狗党絵詞 2

Amazon.co.jp:大日本天狗党絵詞(エコトバ) 2 (2)アフタヌーンKC: 本 シノブは、どろ人形の"しのぶ"をつれまわして"Z氏"をさがす"おじ"を見張るが、"おじ"の眼力を恐れる仲間たちからもしや"おじ"と通じているのではと疑われだし、立場を危うくする。一方、"師匠"は"Z氏"の居場所にたどり着き、おだてあげ、復活させる。

 シノブは天狗の能力も開花し、積極的に活動し、顔つきにすごみがでてきました。しかし、仲間からは疑われるようになり、孤立していきます。

"大日本天狗党絵詞 2"
黒田硫黄
講談社(アフタヌーンKC)
530円
Amazonアソシエイト