海外進出をしたころのジブリの鈴木プロデューサーはよくこう訊かれたそうです、「あなた方の作っているのはジャパニメーションじゃないんですね」。ジャパニメーションといわれているものはセックスと暴力のアニメ、ポルノとしての日本製アニメでした。
この本によると"Hentai(ヘンタイ)"という言葉は日本製のアダルトアニメをさすそうです。いまではアダルトアニメ(マンガ)全般をヘンタイと呼ぶようになりました。宮崎駿とポケモンがなかったら、日本のアニメは「ポルノ」で定着してしまっただろうといいます。
エロが主流というのは、誤解ではなく、日本のオタク・カルチャーがきちんと理解されているように思えますが、ポルノ市場に大量投入されたのは、ロリコン(チャイルド・ポルノ)やレイプに極めて厳しいアメリカのポルノ規制の抜け道として使われたのが大きいようです。対象が実在する少女ではないため(モデルとなっている人物が傷つけられるわけではないため)、「被害者なき犯罪」であり、憲法上、起訴できないから、というのが理由。詭弁ですよね。今のところはセーフだけれども、"ヘンタイ"愛好者の性犯罪が問題化すれば一発で終わりでしょう。
いきなりそんな話から始まってしまいましたが、この本はポルノ話で終始する内容ではありませんよ。
日本でも地方ではアニメがあんまり放映されなくてたいへんだったりするお話をききますが、アメリカだとさらにたいへん。とくにインターネットがなかった時代には。
やっぱり「ゴジラ」は有名なのですが、じつは日本のゴジラ映画はひとりのアメリカ人によって強烈に方向性を左右されていたなんて知っていました?
「ウルトラマン」も人気がでたそうなんですが、「ウルトラセブン」は盛大にこけます。なぜか10年も寝かされたうえに、放送時間が早朝5時、とどめに、セリフがすべてつまんないジョークまじりに変えられてしまっていたそうです。「ウルトラマン」熱中したアメリカ人がウルトラシリーズの最高傑作だと噂にきいていたそれをやっと観られたと思ったら、ぐだぐだのジョークてんこもり。さぞやがっかりしたことでしょう。
こうしたアメリカ独自の改変というのはよくあるらしく、「ガッチャマン」は銀河を旅する宇宙戦士の物語になっているそうです。編集し、オリジナルの映像を継ぎ足して、R2-D2みたいなロボットが行き先の惑星を指示してガッチャマンたちはそこで宇宙の侵略者たちと戦う。すごいなーと思っていたら「マクロス」は「マクロス」と「超時空騎団サザンクロス」と「機甲創世紀モスピーダ」をくっつけて、「ロボテック」というひとつのシリーズにむりやりしてしまったんだそうです。それでもヒットしたのがすごいところです。
かつての日本が、中国の文化をとりいれ、日本独自の文化をこしらえたように、アメリカにおいての、日本のアニメ・特撮・マンガも、ストレートな取り入れ方から、独自のものを生みだす方向へと変わってきました。この本ではとくにマンガでの影響がくわしく語られています。
雑誌連載記事がもとになっているということで、数ページごとにひとつのテーマにしぼられており、話題が多く、間延びせず、飽きずに読んでいけます。著者が、記者や評論家ではなくて、ほんとうにアメリカ人のオタクなので、誤解がなくて、短い文章の中でもターゲットをきちんととらえているので、充実もしています。おろもしろいです。
"オタク・イン・USA
愛と誤解のAnime輸入史"
パトリック・マシアス
太田出版
1554円
