2010年1月21日

心霊写真

心霊写真 [DVD] 真夜中の道路を急に横切ってきた女性を車でひいて逃げてしまった日から、怪現象がつぎつぎと起こり始める、というホラー映画。話が進むと、ぼろぼろと隠されていた事実が見えてきて、じつはこのひき逃げが怪現象の起点ではないことがわかります。

 ホラー的な表現は清水崇監督の『呪怨』をしっかり勉強したようです。単に映像だけではなく、「怖がらせる」ことにも成功しており、かなり怖い部類のホラー映画になっています。しかも、『呪怨』とちがってストーリーがきちんとあります。

 ところが、こうストーリーがちゃんとあって、ぴしっと終えられてしまうと、見終わったときに物足りなさを感じてしまいますね。
 怪談とか怪奇現象というのは、割り切れない部分がたくさん残っているものです。それと理不尽さ。そういうのがなくなって消化がよくなってしまうと、"作り話"感が強くなって、ちょいと物足りなくなってしまうのです。
 まったく贅沢な話ですが。
 しかしながら、娯楽というのは本来、贅沢なものですからね。そしてすっかり堕落して、グルメ気取りなことを偉そうにつぶやいたりしてしまうのです。

"心霊写真"
監督: バンジョン・ピサヤタナクーン、パークプム・ウォンプム
出演: アナンダ・エヴァリンハム、ナッターウィーラヌット・トーンミー、アチタ・シカマーナー ほか
3990円
Amazonアソシエイト

2010年1月19日

ファニーゲーム

ファニーゲーム [DVD] 湖畔の別荘にやってきた家族が、にやにやしながら安っぽいゲームのように人を殺すふたりの若者にもてあそばれる映画です。『時計仕掛けのオレンジ』と同じ分野に入るのでしょうか。ふたりの若者はやさしそうな外見、どなったりもしません。こんなやつら実際にいるよ、と「現実が」怖くなりなす。進行はあくまでもクール。直接的な暴力映像はなく、他の人の表情を映していたり、あるいは別の部屋から音だけが聞こえてきたり、もしくはすべてすんだ後――顔が腫れあがっていたり、とすべては想像におまかせにしてあります。映像的にはおもしろい作品です。ふたりの若者が逃げだしたとき、その場に残された母親が"ぼーっ"としているところを長回しにした場面はすばらしいできです。

 後味は、悪いというより、物足りない
 終盤、若者たちに都合の悪いできごとがおこります。すると、ビデオのリモコンをさがして巻き戻し、みている画面が巻き戻って、さっきのは無しになります。そういう"実験的"もしくは"前衛的"といわれる演出が一回だけでてきます。いちおう、いきなりそういうことをやった、というわけではなく、映画のかなり早い段間で、登場人物が画面に向かってウィンクするなど、これは映画であり僕はそれをわかっているよという(メタ構造の)指摘はしているのですが、印象としては唐突感が強いように私は思います。
 また、若者の間で、いきなり、虚構と現実についての会話が交わされます。
 犯人の若者たちは、映画の中の他の登場人物だけではなくて、観客をも愚弄している、と解釈することはができますが、自分には、この終盤の煙に巻くような展開には問を感じます。
 一般の観客には「なんだこりゃ?」ととまどわせるだけでしょうし、あるていど映画にくわしいマニアにはまったくものたりないものになっています。
 映画では「前衛」とよばれる、実験的な映画をつくりまくっていた時代が過去にあります。
 だから、ただ、ちょっと変わったことをやって「すげえだろ」「おれ天才」と、どや顔をされても、変わったことをするだけだったら過去に死ぬほどそんな映画があるんだよ、ということになるわけです。
 過去にどういうふうな映像的な実験がなされてきたかを体系的にまとめた本が、映像を付録にして、一般に流通されればいいのにと思います。作る方は大変ですが。実験的な映画はたいてい観るには退屈ですから。そういうものができればこれを下敷きにして、現実に縛られない変わった表現方法を生かしたおもしろい作品がもっとでてくるはずです。
 たいていの場合、実験的な表現がすでにあると知らないから、てきとうに実験的なことをやって、しかも、やっただけで価値があると勘違いして、てきとうに垂れ流してしまうことが多いように感じます。

 監督が、若手だったら、そういう垂れ流しを調子に乗って最後にやってしまった、ということがあるかもしれませんが、この監督はそうではありません。1942年生まれ、現在67歳。大学で演劇の勉強をしているので前衛・実験的というのには触れているはず、です。だから、ちょっと調子に乗っちゃったということではないはずです。

 じゃあどういう意味があるのかなと想像すると、他の映画制作者にたいしての皮肉、疑問なしに映画を観て、評価している観客への皮肉、ですよね。賛成されなくてもいいから、ゆさぶりをかけたい、停滞はいやだ、という意欲の表れなのでしょう。

"ファニーゲーム"
監督: ミヒャエル・ハネケ
出演: ズザンネ・ロータ、ウルリヒ・ミューエ、アルノ・フリッシュ、フランク・ギーリング ほか
3990円
Amazonアソシエイト

2009年9月 8日

ワイヤー・イン・ザ・ブラッド サードシーズン

 ほっそりやさ男の犯罪心理学者トニー・ヒルと、刑事課の強気なリーダー、キャロル・ジョーダンを主人公とする犯罪捜査ドラマシリーズです。
 現代的な異常犯罪をしっかりとした推理ドラマの手法で描き、みごたえある作品に仕上げています。

『シークレット・ガーデン(Redemption)』
 映像がかなり洗練されました。セカンドシーズンあたりだとカメラワークに凝ろうとしてるのはわかるんだけ、犯人視点や演出としてのアングルなどが整理されず乱雑につかわれていて、さわがしいばかりだったものが、きれいで、見て楽しめるものへと変わりました。
 今回は、少年を狙った連続殺人事件です。鎮静剤を過剰に吸わせて安楽死させられた少年の遺体が展示でもされているかのように配置された状態で見つかります。被害者がひとりふたりと増えていくと、被害者に親から虐待されていた事実があきらかになります。やがては、この犯行が数年前に行方不明になったべつの少年たちと深く関わりがあることもわかってきます。
 事実がひとつずつあきらかになっていくごとに、殺人者の心の闇に近づいていき、緊迫の度合いを増していきます。そしてストーリーも、犯人を罠にかけるスリリングなラストへと向かいます。

『バッド・シード(Bad Seed)』
 前回、映像が良くなったと思ったけど、今回は、あれ? と思う場面がちょっとありました。一番目だったところでは、トニーが立ち去るラスト近くのシーン。やりすぎです。アクションヒーローじゃあるまいし、大げさで、いいところなのに興ざめです。
 ストーリー的には、犯人となる人物が終盤に突然出てくるタイプで、推理物としては破綻していますが、犯人の人物像はそこまでの話でたっぷりと語られているので、ドラマとしての問題はありません。
 そのお話ですが、元・殺人鬼が精神治療を受けて出所、本を書き、さらには心理学の学位を求めてトニーの元にやってきます。トニーはいま関わっている殺人事件の手口が、その男のやり方を真似ていることに気づきます。

『9 P.M.(Nothing but the night)』
 原題とおなじ題名の映画(日本では『デビル・ナイト』というタイトル)がありますが、どうやら関係はなさそう(参考リング→アマゾン紹介ブログさるさる日記)。
 ひとりぐらしを狙った凶暴で残虐な殺人事件が続きます。トニーは犯人が同一であると見ますが、まるで別人のように犯行の特徴が違っていることに困惑します。そうしているうちにつぎの事件が起こります。被害者は若い男性、池の岸辺で完全にバラバラにされていました。
 トニーは、犯人はふたりいて、互いに妄想で刺激しあった結果が、犯行の非同一につながっているのではないかと予想します。視聴者が見ている映像には犯人が映しだされます。若い男女です。男性は高圧的で、女性に日常的に暴力をふるっているようです。
 ここから、犯人まで、どうたどり着くのかが楽しみな作品になっています。犯人像は見る側にはわかっているはずなのに、さらにもうひと展開させて、われわれを存分に楽しませてくれます。
 このメインの事件とはべつにトニーにストーカー的な女性が迫ってきます。飛行機で隣りあってちょっと会話を交わしただけだったのに、行動はどんどんエスカレートしていって、自分がトニーの妻であると考えるようになります。そして、キャロルの存在をかぎつけ、彼女の排除へと乗りだします。こちらはシンプルなストーリーですが、ラストまでとても怖いものになっています。

『シンクロニシティ.(Synchronicity)』
 ドラマ冒頭の事件で犯人になぐられてしまったトニーは病院の検査で脳に腫瘍が見つかります。言い間違えをしたり、怒りっぽくなったり、症状は急速に悪化していきます。最悪のコンディションのなか、連続狙撃事件の犯人を追いかけます。
 この連続狙撃事件、被害者の共通点をたどっていっても犯人にはたどり着きません。犯行現場に残されたトランプのカードから、どうやらは犯人はカードを引いて狙撃対象を選んでいるらしいとわかります。ランダムなんです。いつか犯人がミスをして逮捕につながることは予想できますが、それを待っていては被害者が一方的に増えるばかりです。推理して、先回りしなくてはいけません。
 最後には、トニーは現場を予想して、犯人を追いつめることができるんですが、これが最初、なぜなのかがわからないんですよね。そこで、よく見なおして考えてみると、一見、完全なランダムで被害者が選ばれているように思えても、カードをどう解釈するかで犯人はしぼられてくるわけです(トニーもそのようなことをいっています)。複雑に見えて、これは意外に単純な事件でした。あまり書きすぎるとネタバレにもほどがあるのですが、理解のためにあとひとつだけ、――最後の事件の現場は最初の狙撃事件の現場と同じ場所です。
 ところで、ドラマ冒頭の事件は、ドラマ全体と関連性があるのでしょうか? ほんとうに無関係の事件なんでしょうか? ふつうだと暗示的な仕掛けを凝らしますよね。うーん、自分にはそうだともちがうとも判断がつかないんです(TωT) ウゥ・・・


参考リンク
「Nice to meet you!」サイト内ワイヤー・イン・ザ・ブラッドのレビュー
Wire in the Blood - 英語版Wikipedia

2009年8月 3日

片腕マシンガール

片腕マシンガール [DVD] いじめをうけて殺された弟の復讐に立ち上がった姉の物語です。左手を斬りおとされ、そこにマシンガンをそなえた鋼鉄製の腕を取り付けて戦います。敵は、服部半蔵の血を引くやくざ。手裏剣飛び交い、奇っ怪な武器で少女を待ち受けます。

 特撮アクション映画です。お人形を駆使した伝統的な特撮で血しぶきや破壊される肉体を描写。リアルさよりも見たおもしろさを追求しています。CG合成もあり、飛び交う手裏剣などにかなりセンス良くつかわれています。

 おバカあり、つっこみどころも満載に作られているんですが、わざとつっこみどころを作っているんじゃないかなーと思われるところがあり、そこはマイナスです。
 えらいことかっこいいシーンがいくつもあり、思ったよりも数段たのしめます。
 情熱がそそぎこまれていて、いい映画だなーと思います。

 この映画はどうやらアメリカ向けにつくられた作品のようです。それを逆輸入したという感じなのでしょうか。

"片腕マシンガール"
監督: 井口昇
出演: 八代みなせ、亜紗美 ほか

Amazonアソシエイト

2009年7月23日

ワイヤー・イン・ザ・ブラッド セカンドシーズン

 犯罪者とくに殺人者を専門にしている臨床心理学者のトニー・ヒル博士と、捜査チームのリーダーでトニーを信頼し一緒に事件の真相究明にあたる女性刑事キャロル・ジョーダンを主人公とする推理ドラマのシリーズ「ワイヤー・イン・ザ・ブラッド」の第2シーズンです。

 現代的な猟奇的な殺人事件を古典的なしっかりとした推理ドラマの形式で描き、刺激的で、さらに物語的にも面白い見応えのある作品に仕上げられています。

『クライング・ドール(Still She Cries)』
 これまでにちょこちょこ登場してきたふたりの女性がうごきます。
 ひとりは連続殺人鬼の女性。トニーが毎回、面会しに行っていたあのひとです。善良そうでかつ知的な面をみせていた彼女。ときおり見せる凄みの表情にぞくっとした怖さを感じさせていた彼女ですが、今回は性格が変わったようにおどおどしています。どうやら自分が殺してしまった者の影におびえているようです。
 もうひとりは、トニーの教え子の女の子。あからさまにはトニーを好きだという態度はみせないけど、トニーと女性の刑事さんの間柄を分析してそれを指摘したりとちょっかいをしかけます。彼女の友達が、今回起こるの事件の被害者です。
 今回の事件は、女性を狙った連続殺人です。犯人は警察に対して挑戦的で、手紙・電話でメッセージを送りつけてきます。
 トニーのプロファイリングは"あるひとつのこと"がわからないために定まらず、揺らぎます。それが結末へ向かっての勝負どころになってきます。
 印象に残ったのは、ここで見た劇場型の犯行が、自分の行為をひとのせいにするため、だということ。このドラマの、この犯人に限っての話ではあるのですが、おなじタイプの人がけっこういそうです。

『ウィッチ・コード(Darkness of Light)』
 冒頭で逃げていく女の人が殺されるシーンがあり、つぎには工事現場から重なりあった骨が見つかる場面になります。
 骨は500年ほどまえのかなり古いもので、調査中さらにその下から最近殺されたとみられる新しい白骨死体がでてきます。
 あるていど話が進んで初めて、工事現場での死体発見が現在の事件であり、冒頭の逃げる女の人の殺人は10年前の事件であることがわかります。
 これらの事件がどうからんでくるのか、そもそも、いったい何が起こっているのか?
 冒頭の事件は林の中で起こっていて、その林には、樹皮に魔女の絵が刃物の先で刻み込まれている木がいくつかあり、どうやら魔女がらみの事件であるようですが。
 しばらく進むと、超能力みたいなもので火を付ける場面や、騎士が持つような剣が宙に浮いている場面まででてきます。
 どうやって話に収拾つけるんだろうと不安8割楽しみ2割でドキドキしてきます。
 しかしこれが、けっこう見事に収まりがつくので感心させられます。

『クロス・レクイエム(Right of Silence)』
 バール(金属製の大型の釘抜き)で滅多打ちにされた死体が発見される。それは現在、逮捕され拘留中の男の手口とまったく同じであった。それではいったい誰がこの事件の犯人なのか?
 犯人はわりと早い時点で暗示されます。ある程度わかってもらった上で視聴者に勝負をかけてきます。
 ところで、原題は訳すと「黙秘権」なのですが、それと物語とのつながりが自分にはわかりませんでした。黙秘権を主張してくる人はでてこないし、黙っているだけという感じの人も登場しません。なんでしょう?

『エンジェル・オブ・デス(Sharp Compassion)』
 最初の事件は6、7分で解決。被害者はどうやら助かる見込みであったが容体が急変して死亡します。警察で遺体を解剖すると、血管に空気が送られて殺害されたことがわかります。被害者は二度殺されてしまったわけです。
 ドラマ全体はたくさんのことが起こって複雑に見えますが、事件自体はきわめてシンプルです。
犯人との距離感を保つために、あえて深く描こうとしなかったのではないかと私は考えます。共感させてしまってはいけないし、逆にあまり異様な人物にしてもいけない。微妙な立ち位置がこのドラマの味わいになっているのだと思います。
 物語の軸をシンプルにした分、周辺のエピソードをふくらませて、ストーリーの求心力としています。トニーは大学での立場があやうく、警察では昇進をめぐってもめ事がおこります。被害者が亡くなった病院では、院長が政治的なコネをつかって警察に圧力をかけ、MI5がのりだしてきます。そして事件は解決から遠のいていきます。どうなるんだよ、という気持ちが、ドラマを見続けさせる力になります。

参考リンク
「Nice to meet you!」サイト内ワイヤー・イン・ザ・ブラッドのレビュー

2009年5月20日

ワイヤー・イン・ザ・ブラッド

 連続殺人犯を追う女性刑事と臨床心理学者のコンビを描いたイギリスのドラマシリーズです。
 猟奇殺人っぽいものまで扱いながら、イギリスの推理ドラマ特有の質の高いしっかりした味わいで楽しませてくれるなかなかの作品です。

 レンタルだと1話目は『ワイヤー・イン・ザ・ブラッド』(原題: WIRE IN THE BLOOD-THE MERMAIDS SINGING)、2話目は『キリング・シャドー』(原題: WIRE IN THE BLOOD-SHADOWS RISING-)、3話目は『デス・ペナルティー』(原題: WIRE IN THE BLOOD-JUSTICE PAINTED BLIND-)となっています。3作で第1シーズンです。以後、4作で1シーズンを構成し、現在は第4シーズンまでDVDがでています。

 1話目は、犯人がむこうから現れ、推理や思わせぶりな演出による進行がラスト前でぶっちぎられるので、ちょっと残念なできばえです。犯人がむこうから現れるのは、犯人が報道を意識しているという伏線が張られているのでおかしくはないんですが、まったくいままででてこなかった人物が犯人としてでてくると、ここにくるまでのあの場面やあの場面はなんだったんだよという気分にさせられるので、いい構成とはいえないと思います。

 2話目は、芸能人にまとわりつくストーカー的なファンと、少女の連続殺人です。さてこのふたつの事件がどうやって絡まってくるのかが興味を引く作品。できばえは良。だけど、犯人の動機に説得力が弱く、これだったらあえてもう少しわかりにくくして動機に不透明さをもたせたほうがよかったのかもと思いました。まあ、犯行を重ねているうちに異常性が増したんだろうけど、それは見ていてわかりにくい。ストーカーというものがそれを説明しているのかな? むむ。

 3話目は、犯人が裁判で無罪となっていまだ解決していない少女暴行殺人事件の犯行をまねた殺人事件が起こります。死体には数字の2と書かれた紙がとめられており、犯人からのメッセージが感じられます。無罪となった犯人がまた犯行を重ねているのか、そうでないなら模倣犯か、もしくはなんらかの復讐がおこなわれているのか? 推理は二転三転としながら緊迫感を高めラストへとつながります。これは傑作です。

参考リンク
「Nice to meet you!」サイト内ワイヤー・イン・ザ・ブラッドのレビュー参考リンク

2009年2月23日

28週後‥

Amazon.co.jp: 28週後... (特別編): ファン・カルロス・フレスナディージョ, ロバート・カーライル, ローズ・バーン, ジェレミー・レナー, マッキントッシュ・マグルトン: DVD 『28日後...』の続編にあたります。前作の監督はプロデューサーにまわっています。舞台、設定は継承されていますが、登場人物は一新されています。

 この映画はジャンルとしては、ゾンビ映画の範疇にはいりますが、ここにでてくるゾンビは「動く死体」ではなく、「生きた人間」です。凶暴性を極端に発露させてしまう特殊なウィルスに感染してモンスターになってしまいましたが、あくまでも人間です。
 まだ感染していない人間を見つけると猛スピードでかけだして襲いかかります。この「走るゾンビ」の恐ろしさは前作『28日後...』で大きな話題になりました。
 感染者は、怒りの感情以外なくなってしまっているため、人に噛みつくことで少しは胃になにか入るのでしょうが、通常の食事といえるものをしなくなっています。そのため放っておけばやがて餓死してしまいます。
 映画の舞台はイギリスです。イギリスは完全に隔離され、感染者の全滅が待たれました。
 28週後、ついに安全宣言がだされ、首都ロンドンから再開発が始まります。
 
 主要登場人物のひとり、ドン(ロバート・カーライル)は、ウィルス感染と感染者から逃げおおせた生存者で、再開発事業では重職についています。オープニングのストーリーで見ることになりますが、彼は感染者に襲撃を受けた際に、妻を見捨ててきてしまったという秘密を隠しています。ウィルス発生時、スペインに旅行へいっていた、ふたりの子供がイギリスに帰ってきてようやく再会することができましたが、本当のことは話せませんでした。
 子供たちは、母親がなくなった場所をみようと、ドンに内緒で出かけていきます。そして、物語は展開します。

 妻を見捨ててしまったドンの心情が軸になるはずなのですが、あいまいなまま、あっさりと終わってしまうのが、ちょっと不満でした。食べたりない気分です。
 ドンの妻も結果的に選択ミスをしてしまっているのを考えると、うーん、これでもいいのかな、とも
"今は"思えるのですが。
 これが映画ではなく小説だったら、うまく結末がすっきりおさまったのかもしれません。映画は場面がいつも動いていて、他のところにすぐ行っちゃうから、印象の重ねあわせはむずかしいですよね。
 選択ミス、といえば、主要登場人物の多くがけっこうミスをしています。未来はみえないから、良かれと思ってしたことが後で惨事をまねきます。
 うーん、ゾンビ映画って、情緒あるねー。

"28週後‥"
監督: ファン・カルロス・フレスナディージョ
出演:ロバート・カーライル、 ローズ・バーン、ジェレミー・レナー ほか
3900円
Amazonアソシエイト

2008年11月23日

LOFT

Amazon.co.jp: LOFT ロフト デラックス版: 黒沢清, 中谷美紀, 豊川悦司, 西島秀俊, 安達祐実, 鈴木砂羽, 加藤晴彦, 大杉漣: DVD 新進作家の春名礼子(中谷美紀)は次回作がうまく書けず悩んでいた。リフレッシュするために、いま住んでいる所を離れてみることにする。引っ越し先は、担当編集者(西島秀俊)に紹介してもらった田舎の小さな洋館だった。引っ越したその夜、となりにみえる鉄筋コンクリートの古い建物に、布でつつまれた人間の遺体らしきものが運び込まれるのを目撃した。翌日、電気工事に来た業者に、それとなく訊いてみると、となりの建物は、大学の研究施設であることがわかる。東京に戻ってその大学のことを調べてみると、大学の研究者によって、引っ越した家の近くの沼から千年前の女性のミイラが発見されていたことを知る。......

 見せ方はホラーですが、中身は幻想文学っぽい映画で、「死体について人が思うこと」を題材にしています。

 いくつかあるエピソードのそれぞれが、もうちょいな感じでものたりなく、不満足なまま映画が終わってしまいます。もっと長時間の作品にするかそれとも小説だったならもっとおもしろかったでしょう。

 佳境に入っての豊川悦司の演技が大袈裟すぎて興ざめします。観る側をクールダウンさせるためにわざとやっているのかと思うくらいのすごい大根っぷりです。こういうわざとらしいシーンが黒沢清作品にはあることはあるんですが、その系列なのか、......よくわかりません。

 最初は夢の中にでてくる、滑車で死体(ミイラ)を沼から引き上げるシーンが圧巻で、これはとてもすばらしいと思いました。
 もったいない。
 もったいない映画です。

"LOFT"
監督: 黒沢清
出演: 中谷美紀、豊川悦司、安達祐実、西島秀俊 ほか
4935円
Amazonアソシエイト

2008年10月 4日

ブレイブ ワン

Amazon.co.jp: ブレイブ ワン 特別版: ニール・ジョーダン, ニッキー・カット, メアリー・スティーンバージェン, ジョディ・フォスター, ナビーン・アンドリュース, テレンス・ハワード: DVD 夜の公園で集団暴行を受け恋人を殺された女性が、偶然巻き込まれたコンビニ強盗で犯人を射殺し逃亡。そのときから、犯罪者に鉄槌を下す処刑者になってゆく、というストーリー。

 感情の爆発を押さえ込んで、低く低く緊迫感を途切れさせない描写に見応えを感じます。アクションは無駄なくクール、暴力の現実をしっかりと見せつけてくれます。

 アマゾンのレビューだと「娯楽作品としてどうなのか」というのと「倫理的な問題」の点で、低い評価を受けていますが、「娯楽作品としてどうなのか」というのはちょっと無茶なつっこみで、もうちょっと論点をくわしくのべてもらわないと、映画はぜんぶ娯楽にしてくれよ、まじめなのは嫌だよっていってるみたいだから、それはひとそれぞれということにしてここでは触れないでおきます。「倫理的な問題」というのは、主人公の女性の行為に気がついた刑事が最終的に彼女を許してしまうのが有りか無しかということです。刑事は気づいた時点で彼女にたとえ話をして警告をします。もし親友が犯罪を犯したら自分は見逃さずに逮捕するだろうと。そんなことをいっておいたくせにラストで彼女の行為を許してしまう刑事に、レビュアーさんは疑問を感じているわけです。自分の考えだと、彼女にわざわざ警告する行為というのは、そのことに自信のない表れではないのかと思うんですよね。親しくなってきている彼女のためを思っての警告という面もたしかにあるけれど、自信のなさがあえて正義を口にさせたのではないかと自分は思います。キャラが、完璧な人間として造形されていれば、「警告」でしかないのでしょうが、刑事さんは、警察の無力さ、法の限界を痛感している人間ですから、やはり自信のなさの表れではないでしょうか。
 この「倫理的な問題」には、じつはもうひとつ視点がありまして、それはキリスト教の観点です。人間の法よりも、神の法を優先するという考えです。人間の法はしょせん不完全だから、神の法に照らし合わせた正義を行うべきではないか、ということなんですが、これってこの映画のストーリーとぴったり合うんですよね。じつは、キリスト教的には「倫理的な問題」はここにはないんです。

 とはいうものの、主人公の女性を許してしまうラストは、自分もなんだかなーと思っていたりします。
 メロドラマなんですよねー。
 ここだけ空気が変わって、甘~いんだ。
 あーあ、と思いましたよ。
 でも、こんなハッピーエンドのほうが、いまは受けるのかなぁ。

"ブレイブ ワン"
監督: ニール・ジョーダン
出演: ジョディ・フォスター、テレンス・ハワード ほか
2944円
Amazonアソシエイト

2008年9月21日

Amazon.co.jp: 叫 プレミアム・エディション: 黒沢清, 役所広司: DVD 河口付近の埋め立て地で女の顔を水たまりにつけて溺死させるシーンから始まります。犯人は役所広司が演じています。つぎの場面で、役所広司は刑事になっています。自分が殺したはずの事件の現場に来ています。自分が殺したなんてまったく知らず、女にも見覚えがないようです。女の死体から少し離れたところの水たまりにボタンが落ちていて、それには何かひっかかります。拾いあげて、ドキッとします。......これはもしかすると、自分の持っている上着のボタンなのかもしれない。――

 黒沢清映画としてはストーリーもちゃんとあって、わかりやすい作品になっています。そのぶん、ちょっとまとまりすぎていてものたりない気分にもなります。

 恐がりのひとはこれでも驚くでしょうが、怖い映画ではありません。幽霊を見た話など怖い話のあの不思議さを味わう映画です。(その点からいうと、DVDのジャケットは怖すぎます)。

 主人公を追う形でお話は語られていきますが、映画の構造は「幽霊側の論理」でつくられているため、不思議ぃ~なのです。

 幽霊役には葉月里緒奈。まあ、葉月里緒奈だったらこんなことやりかねないよな、と、つい思ってしまいます(が、もちろんそれはマスコミがつくりあげたイメージ)。

"叫"
監督: 黒沢清
出演: 役所広司、小西真奈美、伊原剛志、葉月里緒奈 ほか
4935円
Amazonアソシエイト