犯罪者とくに殺人者を専門にしている臨床心理学者のトニー・ヒル博士と、捜査チームのリーダーでトニーを信頼し一緒に事件の真相究明にあたる女性刑事キャロル・ジョーダンを主人公とする推理ドラマのシリーズ「ワイヤー・イン・ザ・ブラッド」の第2シーズンです。
現代的な猟奇的な殺人事件を古典的なしっかりとした推理ドラマの形式で描き、刺激的で、さらに物語的にも面白い見応えのある作品に仕上げられています。
『クライング・ドール(Still She Cries)』
これまでにちょこちょこ登場してきたふたりの女性がうごきます。
ひとりは連続殺人鬼の女性。トニーが毎回、面会しに行っていたあのひとです。善良そうでかつ知的な面をみせていた彼女。ときおり見せる凄みの表情にぞくっとした怖さを感じさせていた彼女ですが、今回は性格が変わったようにおどおどしています。どうやら自分が殺してしまった者の影におびえているようです。
もうひとりは、トニーの教え子の女の子。あからさまにはトニーを好きだという態度はみせないけど、トニーと女性の刑事さんの間柄を分析してそれを指摘したりとちょっかいをしかけます。彼女の友達が、今回起こるの事件の被害者です。
今回の事件は、女性を狙った連続殺人です。犯人は警察に対して挑戦的で、手紙・電話でメッセージを送りつけてきます。
トニーのプロファイリングは"あるひとつのこと"がわからないために定まらず、揺らぎます。それが結末へ向かっての勝負どころになってきます。
印象に残ったのは、ここで見た劇場型の犯行が、自分の行為をひとのせいにするため、だということ。このドラマの、この犯人に限っての話ではあるのですが、おなじタイプの人がけっこういそうです。
『ウィッチ・コード(Darkness of Light)』
冒頭で逃げていく女の人が殺されるシーンがあり、つぎには工事現場から重なりあった骨が見つかる場面になります。
骨は500年ほどまえのかなり古いもので、調査中さらにその下から最近殺されたとみられる新しい白骨死体がでてきます。
あるていど話が進んで初めて、工事現場での死体発見が現在の事件であり、冒頭の逃げる女の人の殺人は10年前の事件であることがわかります。
これらの事件がどうからんでくるのか、そもそも、いったい何が起こっているのか?
冒頭の事件は林の中で起こっていて、その林には、樹皮に魔女の絵が刃物の先で刻み込まれている木がいくつかあり、どうやら魔女がらみの事件であるようですが。
しばらく進むと、超能力みたいなもので火を付ける場面や、騎士が持つような剣が宙に浮いている場面まででてきます。
どうやって話に収拾つけるんだろうと不安8割楽しみ2割でドキドキしてきます。
しかしこれが、けっこう見事に収まりがつくので感心させられます。
『クロス・レクイエム(Right of Silence)』
バール(金属製の大型の釘抜き)で滅多打ちにされた死体が発見される。それは現在、逮捕され拘留中の男の手口とまったく同じであった。それではいったい誰がこの事件の犯人なのか?
犯人はわりと早い時点で暗示されます。ある程度わかってもらった上で視聴者に勝負をかけてきます。
ところで、原題は訳すと「黙秘権」なのですが、それと物語とのつながりが自分にはわかりませんでした。黙秘権を主張してくる人はでてこないし、黙っているだけという感じの人も登場しません。なんでしょう?
『エンジェル・オブ・デス(Sharp Compassion)』
最初の事件は6、7分で解決。被害者はどうやら助かる見込みであったが容体が急変して死亡します。警察で遺体を解剖すると、血管に空気が送られて殺害されたことがわかります。被害者は二度殺されてしまったわけです。
ドラマ全体はたくさんのことが起こって複雑に見えますが、事件自体はきわめてシンプルです。
犯人との距離感を保つために、あえて深く描こうとしなかったのではないかと私は考えます。共感させてしまってはいけないし、逆にあまり異様な人物にしてもいけない。微妙な立ち位置がこのドラマの味わいになっているのだと思います。
物語の軸をシンプルにした分、周辺のエピソードをふくらませて、ストーリーの求心力としています。トニーは大学での立場があやうく、警察では昇進をめぐってもめ事がおこります。被害者が亡くなった病院では、院長が政治的なコネをつかって警察に圧力をかけ、MI5がのりだしてきます。そして事件は解決から遠のいていきます。どうなるんだよ、という気持ちが、ドラマを見続けさせる力になります。
参考リンク
→「Nice to meet you!」サイト内ワイヤー・イン・ザ・ブラッドのレビュー