2006年8月29日

28日後

Amazon.co.jp: 28日後...特別編: DVD: ダニー・ボイル,キリアン・マーフィ,ナオミ・ハリス,クリストファー・エクルストン,ミーガン・バーンズ,ブレンダン・グリーソン 動物愛護団体がケンブリッジの霊長類研究センターに忍び込み、閉じこめられていたチンパンジーを檻から解放する。チンパンジーは血液を通じて感染するウィルスに汚染されていた。ウィルスの名まえは"凶暴性"。そして、28日後、病院の集中治療室でたったひとりで目覚めたジムは誰もいないロンドンの街をさまよう。

 ゾンビ映画です。ゾンビ映画に共通する、怖がらせるよりも、人間の性(さが)を描く方を重視しているのも同様。ある意味、陳腐なテーマだけれど、くりかえし語らなければならないものなのでしょう。

 こういうテーマをとると、よくいわれるのが"人間の本性"。平和なときにはいいひとだったのに、自分の命がかかってきたりして追いつめられると残忍で卑怯な行動をみせる。そうすると、人間の本性はこうなんだよ、と指摘するひとがでてきます。でも待ってくださいよ。逆に、人間を殺していかなければいけない過酷な世界でいきる非情な男が、ある瞬間、ちょっとした温かな一面をかいまみせてくれたら、彼は本当は優しい人だったのだというでしょう? 違った状況でべつの一面が見えたからといって、それを本性だとか本当のなにかだとかいってしまうのは不適切な考え方だと思います。

 さてこの映画、テーマはよくあるもの(普遍的っていったほうがいいの?)ですが、映画は新鮮でとてもかっこいい。
 ここは地獄なのか天国なのかそんな光景を見せてくれます。音楽が"アヴェ・マリア"のリミックスが静かに流れたりするのも、この効果に貢献しているでしょう。

 この映画にはバッドエンドの別のエンディングがあり、劇場公開時にはクレジットの後におまけ映像として流されました。DVDにもさらにアレンジが別のエンディングとともにおさめられていますが、これを観ると、生き残った者のこれからの行動がどれだけ大切かを感じさせてくれます。まー、でも、いまでこそ、そんなふうにいえますが、へこみましたよ、映画館で観たときは。

(劇場公開時の感想も書いていて、比べるとおもしろいかなと思ったんですが、どうやらそれはブログになるまえに書いたものだったようでのこっていませんでした)。

"28日後"
監督 ダニー・ボイル
出演 キリアン・マーフィ、ナオミ・ハリス、ミーガン・バーンズ、ブレンダン・グリーソン ほか
995円
Amazonアソシエイト

2006年8月27日

片目のジャック

oneeyedjacks.jpg マーロン・ブランドが主演、監督した映画です。ゴッドファーザーのお爺な姿しか知らないので、壮年期の色気ありすぎな姿が見られてよかったです。

 ジャンルは西部劇。仲間と銀行を襲った主人公は保安官の追跡から逃げている最中、仲間の裏切りにあって捕まってしまう。5年後、刑務所を脱獄した主人公は裏切者の行方を捜していた。そのとき、主人公の腕前を知っている男から銀行強盗をやらないかと誘われる。断ろうとすると、主人公が捜していた裏切者の居場所を教えるという。かつての親友、金を持ってひとりで逃げた男は、彼らが襲おうとしている銀行がある町の保安官になっていた。

 迫力ある序盤の追跡劇から、つぎは復讐劇になるのかなと思いましたが、これがなんの因果かうまくいきません。保安官になっていた男の義理の娘(妻の連れ子)と主人公と恋をし、それを気づかれ、酒場でのトラブルを口実にやっかいな問題を起こすよそ者としてひどい目にあわされて町を追放されます。やがては恋をした女に説得され、復讐をやめて彼女をつれて逃げだそうとしますが、忘れてはいけません。主人公はこの町の銀行を襲うために来ているんです。当然、仲間割れとなり、彼らに、はめられてしまいます。

 主人公はヒーローではなく、基本的に悪人です。いい女が好きで、その好きな女にもへいきでウソをつくような男です。裏道を生きる人間だから、ひどい目にあわされ、それは自業自得だといわれてもしょうがありません。そういう"業(ごう)"もうまく描いていると思います。

太陽

sun.jpg 今日は、昭和天皇を描いた映画「太陽」をみてきました。

 非常に静かな映画です。イッセー尾形が演じる昭和天皇のちょっと変わっていて、ときとしておもしろく、そして鋭さもみせる言動に見入ってしまいました。

 ブログ「映画喫茶」さんのレビューでは、"戦後責任の問題など、新たな議論が生まれない"と批評されていましたが、自分の意見だと、この映画の焦点は"神"が"人間"になることに向けられているので、これでいいのではないかと思います。

 戦争責任を問うと、そこばかりに眼がいってしまい、この映画が持っているていねいな視線が犠牲になってしまいます。小泉純一郎の郵政解散・総選挙のときの「民営化かそうでないか」の選択みたいなのにも似ていて、わかりやすさ議論になりやすさがせっかくこしらえたすべてをこの小さいもののなかに押しこんでしまう。

 それに、この映画で、戦争責任について言及されていないかというとそうではなくて、それを描かないことは戦争責任が問われなかったことを示すことになるし、昭和天皇も(悪くいえば)戦争責任を回避していたことをセリフに取り入れているので、当時をきちんと描写しているといえます。(これはまた日本の姿でもあります)。

 これがヒトラーの映画だったら人間として描くだけでスキャンダルになるのですが(ドイツはヒトラーとナチスにすべてを押しつけたから。ドイツ人にとって彼はモンスターでなければならない。くわしくはこの本を参照)、昭和天皇の"人間"を描いてもスキャンダルにならないのはその存在にかなり大きな違いがあるからです。
 しかし、派手ではないが、静かに影響をあたえる映画であるとわたしは思います。雑草のように、うごきは眼に見えず遅いけれど、いつのまにか庭を埋めつくしていることでしょう。

 イデオロギーに回収されきれない、感じるところの多い、非常によい映画だと思います。
 見て損はありません。

2006年8月21日

マイノリティ・リポート

Amazon.co.jp: マイノリティ・リポート: DVD: フィリップ・K・ディック,スコット・フランク,ジョン・コーエン,スティーブン・スピルバーグ,トム・クルーズ,コリン・ファレル,サマンサ・モートン,マックス・フォン・シドー,ジョン・ウィリアムズ このところ、ぼっさぼっさ髪しか見ないコリン・ファレルがビジネスマンふうのぴっちりきっちりしたヘアスタイルで登場します。

 ストーリーは、未来の米国に、超能力者をつかって殺人を予知し、事件が起こるまえに犯人を逮捕する機構が暫定的に発足する。予知イメージを解析、犯人を逮捕・拘留する実働部隊の指揮官であるジョン・アンダーソン(トム・クルーズ)がある日、犯人として予知されてしまう。

 題名になっているマイノリティ・リポートというのは反対意見、少数意見という意味です。映画のなかで使われるのは"少数意見"という意味で、犯罪を予知する能力をもっている人間が3人いて、3人がすべておなじ予知イメージを見るのではなく、ひとりだけちがっていたりする。その「違った未来」のイメージのことを指しています。
 もちろん、映画全体が、マイノリティ・リポートという物語にもなっています。未来の選択のストーリーです。

 事件は解決かと思わせるところで、もうひと波乱。こんなにまでしてどうやって主人公を助けるつもりなんだろうとわくわくさせてくれます。これは意外にシンプルに解決するんですが、"もうひと波乱"のおかわりをしているので、けっこうおなかいっぱいで、これでよしという気分になります。多段オチの効用ですね。しかもシンプルに終わると、印象は、ストーリーのテーマのほうが強く残るので、なにかを語るにはあっさりと映画を終わらせた方がいいのかもしれません。

 アクションシーンはきれいにつくられていますが、事件の謎解き、サスペンスを楽しませるために、ひかえめに、早めに、短く終わらせています。

 あんなにすごい小型ロボットがあるのに、なんで人力にたよって地道な努力で逮捕しようとするんだろう、というSF映画にありがちな不思議がこの映画にもやっぱりありました。わざとなんでしょうか?
 それと、使わないで終わらせちゃった伏線がありました(失明)。たしかにそれ以前のシーンで「片眼が見えるだけでキングになれる」というなにかを暗示するようなセリフがありましたが。見落としたか。

"マイノリティ・リポート"
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 トム・クルーズ、サマンサ・モートン、コリン・ファレル、マックス・フォン・シドー ほか
999円
Amazonアソシエイト

2006年8月20日

花田少年史 幽霊と秘密のトンネル

 きょうは「花田少年史」を見てきました。

 サブタイトルには「幽霊」とあるし、出だしはコントみたいでしかもあまりうまくなく、どうなることかと思いましたが、すぐによくなってきました。
 子どもの会話がおもしろく、鋭さと天然ボケ、そして容赦なさは、いかにも子どもらしくて、笑わしてもらいました。
 人間関係の裏側を「幽霊」の存在がうまく語ってくれています。またひとつの謎でもあり、ストーリーをひっぱっていく要素になっています。

 名優、北村一輝さんが悪役をばっちり演じています。花田少年(花田一路)のお母さん役の篠原涼子さんが劇中ですがひさしぶりに歌声を聴かせてくれています。うまいです。子役もメインの3人のキャラがきっちり色分けされていて、それぞれの色で泣き笑いさせてくれます。魅力あります。

 おもいっきり笑えるし、泣けるしで、おすすめです。

 ただ、ひとつ問題があって、自分の意志でないにせよ、あんなことしちゃって後が大変でしょう、とりかえしつかないんじゃないと思われる展開がありました。間接的にうまくいってるんだろうと予想がつくのですが、直接のフォローがないので心配です。

2006年8月17日

ふたりの女

twowomen.jpg 1960年イタリアの古い映画です。監督はヴィットリオ・デ・シーカ。出演は、ソフィア・ローレン、エレオノーラ・ブラウン、ジャン・ポール・ベルモンド ほか。カバヤのDVDのおまけつきガム「水野晴郎シネマ館」のものを観ました。ソフィア・ローレンがカンヌ映画祭女優賞、アカデミー主演女優賞をとっています。

 舞台は、第2次世界大戦終盤のイタリア。連合軍の空襲に人々がおびえているローマから始まります。主人公のチェジラ(ソフィア・ローレン)は夫を亡くし、女主人として商店を切り盛りしています。12歳のひとり娘をとても可愛がっています。空襲があまりにもひどくなってきたので、故郷のある北イタリア山岳の田舎へ疎開することにしました。そこでのできごとがつづられます。

 独裁者ムッソリーニは逃亡中に殺され、ファシストは逃走。ドイツ軍もイタリアから撤退。連合軍がやってきます。ナチスの将校がイタリアの格差社会を批判したり、平和をもたらしにきたはずの連合軍にひどいめにあわされたりと、現実の皮肉な面にも眼がむけられています。

 文芸作品といわれているし、なにより白黒の昔の映画だからと高をくくっていると、ダイナミックな映像に驚かされます。

 生きていくことに貪欲でたくましく、ちょっとずるく立ち回ることもあるチェジラは、どんなことが起きてもあまり変わりません。一方、チェジラが「無垢な天使」と呼ぶ娘ロレッタ。ロレッタは終盤、自分たちの身に起きたことで性格を一変させてしまいますが、最後には以前の心をとりもどしたかのように泣きくずれます。戦争時の女性に見られるふたつの性格をよく表していると思います。強いだけ、弱いだけだとやっぱり作りものじみてきます。

 そして、戦争時の異様さ、生きていける世界ではないということもよく表している映画だと思います。

2006年8月13日

ユナイテッド93

 「ユナイテッド93」をみてきました。

 9.11—米国の同時多発テロによって犠牲になった大型旅客機のうちのひとつがユナイテッド航空の93便でした。その93便の乗員・乗客のドラマです。

 携帯電話および機内の有料電話をつかって乗客が外部と連絡をとっていたため、事件後、機内の状況があるていどわかっています。死を間近にした極限状態のメッセージ。男性客が協力して犯人と戦いましたが、飛行機は墜落してしまいました。運命に立ちむかったひとたちです。

 映画の終わりのクレジットタイトルで"As Himself"となっているひとが数人いました。管制官など何人か本人が出演しているのでしょう。

 映像は手持ちカメラの(か、それに似せた)映像で、ゆれたり、ピントがあっていなかったり、人物を最初追えなかったりと、ドキュメンタリー風。でも、印象としては、ドラマっぽく見えます。そういう映像になれてしまっているためか、手持ちカメラだからリアルに見えるということはなくなりました。

 世界貿易センタービルへの突入が93便のハイジャックよりも先に起きており、映画では管制官・軍の視点からそれを見ることになり、93便の待ち受ける運命を強烈に意識させられます。恐ろしく、そして悲しく、涙がでます。
 こういうことが起きてしまう世界は嫌です。仮に戦いが避けられないとしても、こういうのはわたしは嫌です。

2006年8月11日

地獄の逃避行

Amazon.co.jp: 地獄の逃避行: DVD: テレンス・マリック,マーティン・シーン,シシー・スペイセク,ウォーレン・オーツ テレンス・マリック監督の初監督作品です。手堅く作られていて完成度も高いのですが、おもしろみは、やや破綻している他の作品にくらべて落ちます。「天国の日々」「シン・レッド・ライン」「ニューワールド」を観てからのほうがいいと思います。

 ストーリーは、変わり者の青年キットは、年下のホリーとの交際を彼女の父親に禁止され、殺してしまいます。キットは、ホリーをつれて逃げだします。その旅の生活が描かれます。

 キットは、簡単にパンパンと銃を撃って、ひとを殺してしまいます。最終的には、若者に英雄視される犯罪者になるタイプです。
 ホリーは、父親はころされてしまうものの、愛しているひとだし、退屈だった生活から逃げだせたしで、逃避行にロマンティックなものを感じていたんだろうと思いますが、終盤には、なんだかもう嫌になってきてしまいます。
 もういっしょに逃げるのはイヤというホリーに、子どもみたいなかんしゃくを起こしてから「君がわからない」とキットがいう場面が好きです。わかんないのはおまえのほうだって! 観ていて、みんなそうつっこんだことでしょう。

"地獄の逃避行"
監督 テレンス・マリック
出演 マーティン・シーン、シシー・スペイセク ほか
690円
Amazonアソシエイト

2006年8月 9日

茶の味

Amazon.co.jp: 茶の味 グッドテイスト・エディション: DVD: 石井克人,坂野真弥,佐藤貴広,浅野忠信,手塚理美,我修院達也,三浦友和 「鮫肌男と桃尻女」「PARTY7」とおもしろい映画をつくった石井克人監督の作品です。
 通好みの人情話かなーまじめぶっちゃってやだなーと思って、後回しにしてきたんですが、見たら、予想とちがって、とてもおもしろい映画でした。

 ストーリーは、のどかな田舎町に住む、春野家の人々の暮らしをつづります。この春野家、おじいちゃんが目立って変わっていて我修院達也さんが濃いキャラクターをまる出しにして演じています。日常的にふつうに会っているのに窓から縁側にすわる小学生の孫娘をのぞく。孫娘が自分のほうを向くとパシッと窓を閉じてしまう。そのくりかえし、永遠に続く"だるまさんが転んだ"。この孫娘は、ちょっと内面がわかりにくいポーカーフェイスな子で、悩みは、巨大な自分が見えること。なんだか外にいたり、気づいたら地面から顔をのぞかせたりしているんです。ほかのひとには見えません。妖精さんや小人さんが見えるのとわけがちがいます(おなじか?)。
 そのほかの突拍子もない奇抜な出来事をからめながら、日常的な、恋の話や仕事の話、たわいもない日々のことがらがつづられていきます。

 見ている方もたのしいけど、撮ってる方もぜったい楽しんでいるんじゃないかと思います。
 いいですよー、これ。

"茶の味"
監督 石井克人
出演 佐藤貴広、坂野真弥、轟木一騎、浅野忠信、手塚理美、我修院達也、三浦友和 ほか
4935円
Amazonアソシエイト

2006年8月 6日

ロード・オブ・ウォー

Amazon.co.jp: ロード・オブ・ウォー: DVD: アンドリュー・ニコル,ニコラス・ケイジ,イーサン・ホーク,ジャレッド・レト,ブリジット・モイナハン,イアン・ホルム 武器商人を描いた映画。

 武器商人を題材にしたということにすべてが賭けられています。語り口は寓話的で、ゆるめに進行、ひっぱりに欠けており、映画一般としてはやや退屈にもなります。意外に武器商人というのは描かれていないそうで、これからの分野でしょう。

 ラストは、がっちりしっかり作られいて、死の商人と非難され、これだけ嫌われていながら、減るどころか、ほとんど逮捕されず、裁判にかけられることもないのはなぜかがその理由が語られます。このラストで後味がだいぶよくなっています。

"ロード・オブ・ウォー"
監督 アンドリュー・ニコル
出演 ニコラス・ケイジ、イーサン・ホーク ほか
3900円
Amazonアソシエイト