2006年10月29日

父親たちの星条旗

 昨日、「父親たちの星条旗」をみました。

 硫黄島での戦いを、アメリカの青年たちの視点から描いた作品です。日本側からの視点で描いた「硫黄島からの手紙」は12/9から公開されます。

 何人かの兵士が岩山に星条旗を立てようとしている一枚の写真が、アメリカ国内で注目を浴び、政府は戦費を稼ぐための手段として、旗を立てていた兵士たちを国家の英雄として帰国させ、国債を買わせるためのキャンペーンのスターとして利用します。

 星条旗を立てにいく最初のシーンがアメリカ国内でのショーであったり、衛生兵が傷の手当てをしているところに日本兵が急襲してきて、衛生兵はそれを倒し、手当を受けているアメリカ兵のすぐ横で、倒された日本兵が助けを求めながら死んでいく場面があったりと、映画の序盤から、戦争には裏表があるということが表明されます。

 国家の英雄にされ、戦費獲得のキャンペーンを回っていく青年たちの姿と、彼らが体験した硫黄島での戦いが並行して語られていきます。

 戦闘は、アメリカ軍の圧倒的有利で行われました(Wikipedia:硫黄島の戦い、Googleマップ:硫黄島)。空も海もアメリカ軍が支配しています。しかし、日本も、地下道を掘り、コンクリートで地面を厚く覆い、島全体を要塞(ようさい)化していました。戦闘は地獄の様相をみせます。

 戦闘場面はすごいです。アメリカの艦船が居ならび、海を進んでいる場面からもう今までになかった映像です。アメリカ軍の上陸後の戦闘はまさに地獄絵。戦闘場面は、映画全体の、1/3とか1/4ぐらいしかないと思いますが、もし全編が戦闘の映画だったら、たぶん見ているこっちの神経がやられてしまうと思うぐらいのすさまじさです。

 現在、過去、過去でもいくつかの筋が代わる代わる入ってくる構成になっているし、登場人物が多いため、顔と名まえが覚えられないと、たぶんよくわからない、全体の話はわかっても、こまかい場面場面がよくわからなくなってしまう可能性が高いです。見る前にパンフレットを読んでおくのがいいかもしれません。

 クリント・イーストウッドは、物事に裏表があるがわかっている世代の映画監督ですよね。善と悪で描いていてもしょうがないのをよく知っている。昔だったら、きれいな表舞台に隠された裏側を暴きたてればよかったのですが、今のひとたちは、そんなことはもうとっくにわかっているから、かえって、しらけてしまう。裏側の悪に怒りは感じるけれども、あきらめてもいる。けれど、それでも、そんな中にも、なにかをする自分がいて、情熱を注ぐことを望んで、生きている。そんな人々をイーストウッドは映画にしているんだと思います。

 日本編もたのしみです。

2006年10月28日

フィツカラルド

Amazon.co.jp: フィツカラルド: DVD: ヴェルナー・ヘルツォーク,クラウス・キンスキー,クラウディア・カルディナーレ 19世紀末、植民地の時代。アマゾンの入植者フィッツジェラルドは自分の住むアマゾン奥地の町にオペラの劇場をつくり、本場イタリアのオペラを呼ぶことを夢見ている。そのための資金を稼ぐために、ゴムの農場を持つことにした。川の上流にまだ手がつけられていないゴムの木の密生地があった。川の途中に"ポンゴの瀬"とよばれる急流の難所があって、船が通れなかったのだ。フィッツジェラルドは、その川にべつの川が近づいている場所を地図に見つけた。そこを越えさせればいい! 数100トンある船に山を越えさせる前代未聞の計画が実行に移された。

 強烈な情熱を形にした映画です。撮影そのものも難航し、狂気にも近い情熱が最後にはこの映画を完成させる力となっています。

 主役フィッツジェラルドを演じるクラウス・キンスキーは顔が怖くって、しかし笑顔に魅力があって子供っぽさも感じさせ、ぴったり役にはまっています。3人目の主役ということだけれど、それまでは誰にするつもりだったんでしょう?

 オペラは、主人公のモチベーションですが、最初はそれだけのことで、物語の組み立てとしてはべつの物にも変えられるような要素にすぎませんでしたが、事をなした後、物語の終盤では、もはやなくてはならないものになります。オペラの荘厳な色と一体になります。神話的であり、グロテスクでもあり、とても魅力があります。とり憑かれます。

"フィツカラルド"
監督 ヴェルナー・ヘルツォーク
出演 クラウス・キンスキー、クラウディア・カルディナーレ、ホセ・レーゴイ、ミゲル・アンヘル・フェンテス、パウル・ヒットシェル、ウェレケケ・エンリケ・ボボルケス ほか
- 円

2006年10月22日

16ブロック

 「16ブロック」をみてきましたが、これはいいですねえ。おもしろい。

 もう、ただいるだけのようなへっぽこ刑事(ブルース・ウィルス)が裁判所へ囚人を護送する仕事をたのまれる。かんたんな仕事のはずが、囚人を消そうとする謎の男たちがあらわれ、事態は最悪の方向へ進んでいきます。

 その囚人は、警察の汚職に絡んだ事件の証人だったので、同僚の刑事たちから追跡を受け命を狙われます。

 人混みと渋滞している車。舞台となるニューヨークの雑踏のできばえがとてもすばらしいです。そういうごっちゃりした場所でのアクション、カーチェイスは迫力満点です。

 主人公のかつての相棒で、いまは敵方のリーダーである刑事(デヴィッド・モース)が渋くてかっこいい。
 囚人役にはモス・デフ。おしゃべりで、おもしろく、ここまではだめだったけどこれからはちがうぞと、まだまだ希望に充ちている男を演じます。

 ストーリーがよく練られていて、これはバッドエンドしかないかというところから起死回生を狙ってきますし、追々あきらかになっていく人物同士の関係が、展開のおもしろみだけではなく人物描写に深みをあたえてくれています。シリアスに収斂していくドラマは、かなり日本人好みだと思います。もっと宣伝すれば、ロングランを狙える作品です。
 おすすめです。なにかないかと思っていて、これがやっていたら、迷わず選びましょう。

2006年10月19日

いつかギラギラする日

Amazon.co.jp: いつかギラギラする日: DVD: 深作欣二,萩原健一,木村一八,荻野目慶子,多岐川裕美,石橋蓮司,八名信夫,安岡力也,原田芳雄,千葉真一 過去に数々の銀行強盗を成功させてきた神崎(萩原健一)、井村(石橋蓮司)、柴(千葉真一)の三人が、柴の誘いでひさしぶりに仕事をすることになった。ネタの提供は、柴の若い恋人麻衣(荻野目慶子)の知り合いで角町(木村一八)という男。金を奪うことには成功したが、二億円入っているはずのジュラルミンケースには五千万しか入っていなかった。角町は銃を乱射。井村は殺され、柴は重傷を負った。神崎は奪われた金をとりもどす行動にでる。

 萩原健一演じる神崎のかっこよさ。とにかく強い。そしてクール。金を奪って逃げた角町はディスコ(というかライブハウス)を開くための資金が必要で先にヤクザから金を借りています。それを知った神崎はヤクザの事務所に怒鳴りこむ。このヤクザが、神崎にやられっぱなし。まだ角町が金を返しにきていなかったのを知ると、あの五千万は俺の金だ、と言いすてて退場。かっこよすぎです。
 ここからこのヤクザも金をめぐる戦いにかかわってきます。原田芳雄が殺し屋として登場。脇役なんですが、別格の存在感を示します。

 ダサいと思う場面もちょこちょこあるんですが、全体の流れがいいんで、しらけることなく見ていけます。

 この映画は元気がでます。自分は栄養剤にしています。
 今回ひさしぶりにDVDをひっぱりだしてきて、最初は何回かにわけて見るつもりでいたんですが、始まったら最後までそのまま見つづけてしまいました。

"いつかギラギラする日"
監督 深作欣治
出演 萩原健一、木村一八、荻野目慶子、多岐川裕美、原田芳雄、樹木希林、石橋蓮司、千葉真一 ほか
3990円
Amazonアソシエイト

2006年10月16日

シン・レッド・ライン

Amazon.co.jp: シン・レッド・ライン: DVD: ジェームズ・ジョーンズ,テレンス・マリック,ジム・カヴィーゼル,ショーン・ペン,ニック・ノルティ,エイドリアン・ブロディ,ベン・チャップリン,ジョン・キューザック,ミランダ・オットー,ジョン・サヴェージ Thin Red Line、勇敢な少数者、細い赤い線。

 日本敗走のターニングポイントであるガダルカナル島での戦いを舞台に、アメリカ兵たちのそれぞれの想いが語られていきます。

 南の島の青い海、風にゆれる緑。とても美しい自然の映像に対比して、冷酷な戦闘風景が描かれます。カマキリが獲物をつかまえて頭を囓るように、ひとの命はさっくりと奪われていきます。

 一般のアメリカ人にとって加害者である日本兵がアメリカ人の被害者のように描かれるのも特徴のひとつです。狂った人間ではなく、とてもか弱い人間です。登場人物のだれも口にはしないものの、なんで戦っているんだかわからなくなってきます。

 主な登場人物のひとり、ふしぎな魅力を持った青年ウィットは映画の冒頭で現地のひとたちと平和で夢のようなひとときをすごしています。彼は仲間と脱走していたのでした。戦いとはべつの世界がこの場所にあるのに、というところから映画は始まります。
 そんなふうに、自分を見つめなければならない瞬間がくりかえし、くりかえし、なんども訪れ、この映画は形づくられていくのです。

"シン・レッド・ライン"
監督 テレンス・マリック
出演 ジム・ガヴィーゼル、ショーン・ペン、ベン・チャップリン、エリアス・コーディアス、ニック・ノルティ ほか
2500円
Amazonアソシエイト

2006年10月15日

ブラック・ダリア

 「ブラック・ダリア」を観てきました。

 ちょっとノリきれないところもありますが、原作のジェイムズ・エルロイの絡みあうプロットをうまく盛りこんでいたと思います。シリアスにやっていてもなんだかコミカルなブライアン・デ・パルマの映像がたっぷり味わえます。とってもデ・パルマ丼です。エルロイは暗黒を描き、デ・パルマは悲劇と喜劇の表裏一体を描いたといえるでしょう。

 女優志望の女が無惨な死体でみつかり、ロス市警の刑事リー・ブランチャード(アーロン・エッカート)は事件の捜査に病的にのめり込む。相棒のバッキー・ブライカートはやや距離をおきながら捜査にのりだすが、謎の糸がときほぐれていくにつれ、事件の真相にある悪夢にどっぷりと体を沈めていくことになります。

 ころころころころと話が進んでいくので、もしかすると、誰がなにやってるんだか、犯人が誰なんだかわからなくなっちゃうってことになるかもしれません。登場人物のかかわり合いが多いんですよね。

2006年10月 9日

回路

Amazon.co.jp: 回路 デラックス版: DVD: 黒沢清,加藤晴彦,役所広司,麻生久美子,小雪 まわりから、ひとが消えていく。最初は同僚の自殺だった。やがて、鬱にとらえられたように、ひとり、またひとり、生きる気力をなくし打ちひしがれ、いつまにか、いなくなってしまうようになった。
 そのころ、ネットでは、孤独に部屋にひきこもったひとを映しだす映像とともに、開かずの間をこしらえて幽霊を見ようとする方法が広まっていた。

 大雨が降り水があふれだして大きくなり濁流となってついには街へ流れ込み、ひとや家を押し流していくような、大きな力。もはや最初の原因ががなんであったか知ったところで止めることはできない。それを「回路」と呼んでいます。
 幽霊がどんどんこちら側にあらわれ、ひとびとを飲みこんでいく連鎖を起こす回路ができあがってしまった。そういう映画です。

 自殺するひとは、いまの絶望から逃れようとして命を捨てるわけですか、だがしかし、死んでも救いがないのだとしたら? ずっとこのままがつづくのだとしたら? という恐ろしいメッセージも発しています。作品性はネガティヴだけれどもネガティヴなひとの腹をもえぐるようなところがあります。

 相変わらず、説明すっとばしたり、いきなりいそいで説明したりとわかりにくいところが多いのですが、
この「回路」のようにストーリー性が強い作品だと、詩のようなギザギザ、ぎらぎらした感じがでてきて、頭ではわかりにくいなと思うけれど、感覚としてはとても気持ちよさがでてきます。官能にうったえる部分に自分は魅力を感じます。

 ちなみにジャケット写真は内容と合っていません。貞子みたいのがいるんですけれど、そういう面をうったえるのは違うと思います。センスありません。いまだに見るたびにがっかりします。

"回路"
監督 黒沢清
出演 麻生久美子、加藤晴彦、小雪、有坂来瞳 ほか
- 円
Amazonアソシエイト

2006年10月 8日

ザ・センチネル 陰謀の星条旗

sentinel.jpg 「ザ・センチネル 陰謀の星条旗」をみてきました。

 アメリカ大統領を警護するシークレットサービスに裏切者が!という映画。
 主な登場人物はふたり。大統領夫人を警護するベテランのピート・ギャリソン(マイケル・ダグラス)と調査担当のエース、デヴィッド・ブレキンリッジ(キーファー・サザーランド)。
 ピートの親友でもあるシークレットサービスのエージェントが何者かに殺害され、デヴィッドが調査にあたります。ピートとデヴィッドもかつては親友でしたが過去に遺恨があり現在は決別しています。
 前半はこのふたりによる調査です。大統領暗殺計画があることがわかり、シークレットサービスに内通者がいることが判明します。ふたりがべつべつにおなじものを調査しているのでややゆるめの展開。
 ですが、後半にエンジンがかかってきます。ピートがあることが原因で裏切者として疑われ、逃亡(内通者にたぶん殺されてしまうから)。追いつ追われつしながらも、大統領暗殺計画は進んでいきます。

 サスペンスとして、とんとんとんと進んでいく話を楽しむ映画です。
 後半はけっこう快感があります。
 犯人がもっと慎重で計画バカじゃないや頭がよかったら、もっと身をよじるような快感があったかもしれません。エージェント側ができすぎです。でも、悪くは描けませんから、やっぱり犯人がもっとよくなくっちゃいけません。

2006年10月 2日

鮫肌男と桃尻女

Amazon.co.jp: 鮫肌男と桃尻女: DVD: 石井克人,望月峯太郎,浅野忠信,小日向しえ,鶴見辰吾,真行寺君枝,島田洋八 ヤクザの金を持って逃げる男と、変態な叔父による監獄のような生活から逃げる女が出会い、運命を共にする。

 黒い皮のコートで全身をつつみ特殊ナイフを投げる男(バスの停留所近くによく張ってあったオロナミンCなどのホーロー看板をあつめるのが趣味)、髪を白く染めてつんつんにとがらせウルトラマンのようなアイウェアに真っ白い革の上下くるくると拳銃のようにライターを回す男、ヤクザはもうぜんぜん日本のヤクザじゃなくて、コミックタッチというか、アメコミのキャラクターのような個性ある悪人がぞろぞろとならびます。

 雪崩れ込むような勢いのあるオープニングにすっかりやられました。
 このテンポで追いかけっこは展開。
 それをベースに、旨味を増す要素がくわえられます。
 出だしで表示される文章——三歳の娘がかけよってきて、パパ、わたしはパパのことを四千年も前から愛しているのよ、というエピソードは「前世療法」という本をだしているひとのものです。逃げている男(浅野忠信)の兄貴分である男(寺島進)は不思議な夢を見ており、前世観念がちょっぴり匂わされます。一瞬で強烈に結びついてしまう、出会いの不思議さ、恋の不思議さについての隠し味となって、セリフや、登場人物たちの命のやりとりに深みがでてきます。
 さらには、我修院達也(若人あきら)という怪人が、その持てる力を存分に発揮。マニアの際物好きといって、とにかく妙なところばっかりに反応し、ほめちぎる、味にうるさく口うるさいマニアの心もばっちりととらえています。

"鮫肌男と桃尻女"
監督 石井克人
出演 浅野忠信、小日向しえ、我修院達也、鶴見辰吾、寺島進、岸部一徳 ほか
4935円
Amazonアソシエイト

2006年10月 1日

夜のピクニック

yorupic.jpg 「夜のピクニック」をみてきました。

 昼夜かけて80Kmを歩きつづけるという高校の行事でのできごとが描かれます。

 好きなひとに告白するだとか、前年あらわれ写真に映っていた幽霊だとか、エピソード満載でたのしませてくれます。軸となるのは、主人公の女の子のストーリー。転校してしまった友だちからの手紙に「おまじないをかけておいたよ」という謎かけがあって、どうなるのかな、とこれもたのしみのひとつ。

 よくないのは序盤かな。校庭に集まっている生徒をみせようとカメラが勢いよく横にうごいて眼がまわってきます。あと、本編のストーリーが動きだす前に、はやいとこ説明しちゃおうというセリフが多いです。うー、いらないのにー、と思いました。本編はちゃんと必要に応じて状況がわかるようになっているので、うざいのは最初だけです。それだけにもったいない気持ちがします。

 まー、しかし、とっても青春でした。
 また、でてくる生徒たちのキャラが立っていて、それだけでも、たのしんでいられます。(そういえば元?モーニング娘。の飯田圭織さんがでていましたよ)。
 これがずっと終わらないでつづけばいいのに…、と思うのも青春ですよね。